悲喜こもごも

読むと得も損もあり!

契約不適合責任と危険負担の改正(3)

【(1)の売主の担保責任の期間制限】

 改正前は,買主は瑕疵を知った時から1年以内に権利行使をしなければならなかったが,改正後は,1年以内にその旨を売主に「通知」する必要があるものの,権利行使は不要。したがって,期間内に通知をしなければ,買主は不適合を理由として,履行の追完請求,代金減額請求,損害賠償及び契約の解除をすることができない。ただし,売主が目的物の引渡し時にその不適合を知り,または重大な過失によって知らなかったときは,この限りではない。

なお,宅地建物取引業者が自ら売主となり,買主が宅地建物取引業者以外である場合は,引渡しの日から2年間とする特約(2年以上であれば有効)の付加が認められている。

  

【危険負担の改正】 

 危険負担とは,中古住宅のような特定物の売買契約が成立した後に,その引渡し前に,一方の債務が履行不能となった,例えば,火事で住宅が焼けた,地震で住宅が倒壊した場合,売主と買主のどちらが損害を被るかという問題。

<改正前>

 特定物の売買で特約がない場合,原則,売買契約により所有権が買主に移転することから,危険も移転するとして,売主に落ち度なく履行不能になったときには,買主が危険を負担。

 例えば,契約後,引渡し前にもらい火によって住宅が滅失した場合,買主は代金全額を支払わなければならない。

<改正後>

 売買契約の当事者双方の責めによらず契約が履行不能になった場合,買主による契約の解除が可能となった。例えば,改正前のケースは,買主は売主に対して契約解除の意思表示をすることができ,また,買主は売主への代金支払いを拒絶することも可能。

 ただし,債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは,解除できない。例えば,債務不履行の部分が数量的に僅かである,付随的な債務の不履行に過ぎない場合などがそれにあたる。また,買主が代金債務から解放されるためには,別途契約解除の意思表示が必要。

 

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契約不適合責任と危険負担の改正(2)

【追完請求権】

 買主が売主に対して,一定の場合を除き,そのものの修補や代替物の引渡し等を請求できる権利。

 例えば中古建物の売買において,雨漏りのない建物が売買対象であった場合,買主は雨漏りの修補を請求できる。

 追完の方法が複数ある場合,原則,買主の希望する方法によることとされているものの,売主は,買主に不相当な負担を課すものでないときは,買主が請求した方法と異なる方法も選択できる。なお,契約不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときには,買主は追完請求をすること不可。

 

【代金減額請求権】

 買主が追完請求しても売主が追完をしない,あるいは,そもそも追完が不能である場合等について,買主が売主に対して代金の減額を請求できる権利。

 ただし,代金減額請求は,原則として買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし,履行の追完がないときは,その不適合の程度に応じて,買主は代金の減額を請求できる。

 なお,追完請求と同様,買主の責めに帰すべき事由によるものであるときには,買主は代金減額請求をすること不可。

 

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契約不適合責任と危険負担の改正(1)

2020年4月1日施行

瑕疵担保責任から契約不適合責任へ

 

<改正前>

 従来の通説(法定責任説)では,売買の目的物,例えば不動産のような特定物に瑕疵があった場合でも,売主は債務を履行しているので責任を負わないと考える。しかしながら,それでは瑕疵がないことを信頼した買主が保護されないため,売主に瑕疵担保責任を負わせる運用。

 売主の瑕疵担保責任とは,売買の目的物に隠れた瑕疵がある場合,売主が買主に対してその責任を負うことをいう。

 例えば,中古住宅を購入したものの,契約時に屋根に欠陥があり,入居後に雨漏りが生じた場合,欠陥の事実を知らず,知らなかったことに落ち度がない買主(善意無過失の買主)であれば,瑕疵を知った時から1年以内であれば損害賠償を」請求でき,契約の目的を達成することができない場合には解除することもできる。

 なお,売買契約では,買主の保護のため,売主の過失の有無を問わず責任を負うとされる(売主の無過失責任)。

 

<改正後>

 契約責任説,つまり債務不履行責任説の特則とし,契約不適合責任が規定されて,瑕疵担保責任は廃止。

 契約不適合責任とは,引き渡された売買の目的物が「種類,品質又は終了に関して契約に適合しない」場合に生じる売主の担保責任のこと。

 例えば,目的物が引き渡されたとき,「種類が違う」「予定されていた品質の基準を満たさない」「数量が足りない」といった契約内容の不適合が起こった場合,買主は損害賠償請求契約解除はもちろん,追完請求代金減額請求とも可能となった。

 

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法務局の自筆証書遺言書の保管制度(3) 撤回,閲覧,事実証明,情報証明

【保管申請の撤回】

1 申請ができる人

遺言者本人に限定。遺言者の法定代理人(遺言者の親権者等),任意代理人(例えば弁護士)による申請は不可。遺言者の死後,その相続人が保管申請の撤回することも不可。

2 手続先の保管所

 原本が保管されている保管所

3 方法

 遺言者本人が保管所に出頭して申請する。本人確認書類として,個人番号カード,運転免許証等の顔写真付の公的証明書が必要です。原則,予約が必要です。なお,郵送による申請は不可。

4 手数料 無料

 

【遺言書の閲覧】

1 できる人

 遺言者の存命中は,遺言者本人に限られる。死後は,関係相続人等に限られるが,法定代理人は可能。

2 閲覧先の保管所

 原本を閲覧するには保管されている保管所,モニターで閲覧するには全国の保管所で可能。

3 方法

 遺言者本人または関係相続人等が,保管所に出向いて閲覧します。原則,予約が必要です。

4 手数料

 原本の場合,1回につき1,700円(収入印紙で納付)。モニターの場合,1回につき1,400円(同)。

 

【遺言書保管事実証明書の交付請求】

 以後者の死後,遺言書が保管されているかどうかを確認したい場合の方法です。

1 できる人

 基本的には誰でも請求可能。相続人以外が請求した場合,保管されているとしても,請求

者を受遺者等にしている内容でない限り,請求者を受遺者等とする遺言書が保管されていな

い旨の証明となります。

相続人が請求した場合,内容に拘わらず,保管されていれば,存在の証明がされます。請

求者の法定代理人による請求も可能。

2 請求先の保管所:全国の保管所

3 方法:窓口または郵送で可(前者の場合,原則予約が必要)

4 手数料:証明書1通につき800円(収入印紙で納付)

 

【遺言書情報証明書の交付請求】

 この証明書があると,検認を経ることなく不動産の相続登記申請手続等に使用できます。

1 できる人:関係相続人等,その法定代理人も可

2 請求先の保管所:全国の保管所

3 方法:窓口または郵送で可(前者の場合,原則予約が必要)

4 手数料:証明書1通につき1,400円(収入印紙で納付)

 

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法務局の自筆証書遺言書の保管制度(2) 保管所・保管官

【保管所・保管官】

前者は法務局で,現時点では,すべての法務局が指定されいるわけではありません。

後者がその事務を取り扱う法務事務官のことです。

 

【保管の申請】

1 手続ができる人

遺言者本人に限定。遺言者の法定代理人(遺言者の親権者等),任意代理人(例えば弁護士)による申請は不可。ただし,介助の付添人の同伴は可能。

 

2 申請手続の保管所

遺言者の①住所地・②本籍地,遺言者が③所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する保管所(法務局)。ただし,すでに他の遺言書を保管してもらっている場合は,その遺言が保管されている保管所(法務局)が申請先となります。

 

3 申請方法

遺言者本人が申請先の保管所に出向いて申請します。本人確認書類として,個人番号カード,運転免許証等の顔写真付の公的証明書が必要です。原則,予約が必要です。なお,郵送による申請は不可。

 

4 対象となる自筆証書遺言書の様式 

民法に定める要件充足

②無封

③A4用紙

④縦置き・横置き不問,縦書き・横書き不問

⑤片面のみに記載

⑥各ページにページ番号記載

⑦2枚上でも閉じ合わせしない

⑧余白を設ける

  縦置きの場合,上が5mm以上,左が20mm以上,右が5mm以上,下が10mm以上

 

*令和2年7月10日より前に作成された自筆証書遺言書でも,様式が合致していれば,保管の対象となります。

 

5 手数料 申請1件につき3,900円(収入印紙で納付)

 

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法務局の自筆証書遺言書の保管制度(1) 制度のメリット

2020(令和2)年7月10日施行

 

【メリット】

図表:保管制度利用の有無と公正証書遺言の比較

 

自筆証書遺言

(保管制度利用せず)

自筆証書遺言

(保管制度利用)

公正証書遺言

作成者

  遺言者

  遺言者

  公証人

形式・内容チェック

遺言者自身か,専門家に依頼

申請時に形式チェックはあるが,内容チェックなし

  公証人

原本保管方法

  遺言者自身

  法務局

  公証役場

相続人が遺言書の存在を知る方法

遺言者から存在を知らされない限り,相続人が探索 *①

遺言者の死後なら,保管事実証明書の交付請求可能 *②

遺言者の死後なら,最寄りの公証役場で有無の検索が可能

検認の要否

     要

     否

    否

*①検認の申立てがなされると,申立人以外の相続人に検認期日が通知される。

*②保管申請の際に申立てすれば,推定相続人等のうち1名に,死後,保管さ

  れている旨の通知をしてもらうことができる。

 

 自筆証書遺言のデメリットは,紛失や改ざんのおそれ,検認が必要なことである。それを補完するのが保管制度です。なお,秘密証書遺言書は,保管制度の対象外です。

 

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「遺留分」を現金で払わなければならなくなった!

令和元年(2019年)7月施行

 トラブルになりやすい相続において、遺言には強力な効力が認められています。一方で、遺言に不満を持つ相続人は、最低限の取り分である「遺留分」を請求も認められています。

 これまでは遺留分を求める遺産が不動産などの場合、実務では,共有名義にすることで解決が図られてきました。

 例えば,亡くなった父が

事業の跡を継ぐ長男に自宅兼店舗1億2000万円、次男は預貯金2000万円を相続させる

 との遺言を残したケースでは、不満を持つ次男が法定相続割合の半額相当分の遺産を遺留分として請求すると、長男が相続した事業用資産が次男と共有状態となり、事業運営に支障が出ることがありました。

 法改正により、これまでの「遺留分滅殺請求」が遺留分を金銭で払う遺留分侵害額請求」となり、現金に一本化されました。

前述の場合には、

長男が父の全遺産を相続してスムーズに事業継続できる半面、遺留分の1500万円を現金で払う

ことが必要です。こうした事例で現金が準備できないない場合には、新たな問題が生じることが考えられます。そして,請求された遺留分を確定する際、「不動産は金銭換算でいくらになるのか」との疑問も生じます。

 預貯金と違い、自宅や事業用資産は必ずしも評価額を明確にできません。しかも一方は遺留分を節約するためなるべく評価額を下げたいし、他方は逆に上げたい。それぞれの思惑が食い違って決着がつかない可能性があります。

 このような場合、家庭裁判所に調停を申し立てることになります。

 調停の際は、不動産鑑定士の鑑定書や不動産会社の査定書などが有力な判断資料になります。そして,調停でも合意できなければ、地方裁判所に訴訟を起こすことになります。

 法改正により,父が事業をしている場合だけでなく、遺言に不満を持つすべてのケースに遺留分の金銭払いは該当します。多額の現金を求められて、問題がいっそうこじれる案件も生じることでしょう。 

 生前に家族間で話し合いを重ね、全員が納得できる結論を出しておくことが、争いを防ぐ一番の方法です。それは,法改正による新ルールのもとでも変わりありません。

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給付金は課税・非課税?(概要)新型コロナ関連給付金の税務上の取り扱い

【基本的な考え方】

 個人に給付金が支給された場合,原則,所得税や住民税の課税対象となります。しかしながら,所得税法や給付金の根拠となる法律により非課税となる場合があります。新型コロナの給付金は,新型コロナ税特法(略称)を根拠とするもので,非課税となります。

 ただし,法人に給付された場合には,法人税の課税対象となります。

 以下の図表を参考にして下さい。

名称

対象者(概要)

所得税

特別定額給付金

すべての国民

非課税

持続化給付金

売上げが減少した事業者

課税

都の感染拡大防止協力金

都から休業要請等に協力した事業者

課税

家賃支援給付金

売上げが減少した事業者

課税

学生支援緊急給付金

バイト収入が減少した学生等

非課税

新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金

休業期間中の賃金支給のない労働者

非課税

雇用調整助成金

休業手当等を支給し雇用を維持した事業主

課税

小学校休業と対応支援金

休校に伴い子どもの世話で就業できなかった,個人で仕事をする保護者

課税

 

 

【控除や消費税の扱い】

 納税者本人やその配偶者または扶養親族が支給を受けた給付金が,非課税となる給付金である場合,所得税法上,所得としてしません。したがって,配偶者(特別)控除や扶養控除または基礎控除の適用上,納税者本人やその配偶者または扶養親族の所得制限の判定には影響を与えない。

 また,消費税法上,これらの給付金は対価性がないため,課税取引には該当しません。したがって,所得税において,事業所得等の金額の計算上,総収入金額に算入されるものであっても消費税は課税されません。

 

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明年も宜しくお願い申し上げます。

民法改正 法定利率(3)傷害保険の保険金にも影響?

結論:ライプニッツ係数が引き上げられ,保険金額が増加

 

ライプニッツ係数による逸失利益の計算

例)40歳で年収700万円の男性

  労働能力喪失期間の始期:死亡時

              後遺障害の症状固定時

           終期:原則,67歳

 

【後遺障害】*労働能力喪失率92%

基礎収入額×労働能力喪失率×中間利息控除係数(労働能力喪失期間に対応するライプニッ

ツ係数)

*労働喪失率:92%

 ライプニッツ係数:18.327(労働能力喪失期間27(67-40)年)

700万円×0.92×18.627=1億1,802万5,880円≒1億1,803万円

逸失利益の額:1億1,803万円

 

【死亡】*被扶養者2名

基礎収入額×生活費(=「1-生活費控除率」)×中間利息控除係数(労働能力喪失期間に対

応するライプニッツ係数)

*生活費控除率:30%

 ライプニッツ係数:18.327(就労可能年数27(67-40)年)

700万円×(1-0.3)×18.327×8,980万2,300円≒8,980万円

逸失利益の額:8,980万円

 

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民法改正 法定利率(2)損害賠償額の増加?

貸金の法定利息については,即,理解できそう。

それ以外では,実質的にどんな影響があるのでしょう?

 

損害賠償額

例)交通事故の損害賠償額算定は,以下のとおりです。

   慰謝料等+逸失利益+弁護士費用+遅延損害金

 

【改正前】

 上記のとおり,逸失利益も請求できます。逸失利益は,被害者が将来就労等で取得できるはずの利益で,一般的に一括前払いで受け取ります。そのため,将来分の利息相当額(中間利息という)を控除して,現在の価値に引き直す必要があります。これを「中間利息控除」といい,法定利率を用いて算定されるものの,法律上の明確な規定がなかった。

 

【改定後】*前の語句に注意しながらお読み下さい。

 中間利息控除に法定利率の適用が明文化され,2020年4月1日前に発生した事故には年5%,それ以降の事故には当面3%が適用される。したがって,逸失利益から(中間利息として)控除される額が(利息につき5%➡3%に)減少し,逸失利益が増加することになります。

 なお,遅延損害金は減少しますが,損害賠償額の構成上,占める割合の大きい逸失利

益の増加は,結果的に

損害賠償額の増加をもたらす可能性

があります。それに伴って,弁護士費用も増加することになります。

 

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民法改正 法定利率(1)引下げと変動制

【改正前】

年5%の固定性

 

【改正後】*令和2年4月1日より

①年3%の変動制(3年ごとに見直しができる)

  *変動制の基準割合は過去60か月の平均値で,現在のそれは,年0.7%。

   現在の経済状況,制度の仕組み等から,短期間に法定利率が大きく変動する可能性は,

   低い。

②適用の基準時

  利息を生ずべき債権における利息金:その利息が生じた最初の時点

    例)貸金利息は,「金銭交付時」

  金銭債務の不履行の遅延損害金:遅滞の適任を負った最初の時点

    例)弁済期の定めがある貸金債務や売買代金債務は,「期限の到来時」

      労災事故など安全配慮義務違反を理由とする契約上の損害賠償債務

      は,「履行の請求を受けた時」

      交通事故などの不法行為による損害賠償債務は,「事故時」

 

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税金の「控除」の意味と仕組み(2)税額控除とまとめ

【税額控除】

 税金そのものを減らすことです。負担を減らす効果が大きい制度で,前回(1)の☆(4)で算出した所得税額から直接差し引くことができます。ただし、税額控除は対象となる場合が限られているため、誰でも簡単に利用できるものとは言えません。

国税庁のHPをご覧下さい。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1200.htm#:~:text=%E7%A8%8E%E9%A1%8D%E6%8E%A7%E9%99%A4%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%81%E8%AA%B2%E7%A8%8E,%E3%82%92%E6%8E%A7%E9%99%A4%E3%81%99%E3%82%8B%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82

 

☆代表例:住宅ローン控除

 住宅ローン控除は、年末の住宅ローン残高に対して1%が税額控除される仕組みです。

 例えば、年末に1,000万円の住宅ローン残高があれば、その1%である10万円の税額控除を受けられます。

 

【まとめ】

 前回のXさんの所得税額が8万7,100円でしたが、ここから10万円が差し引かれるためXさんの所得税は0円となります。なお、控除しきれなかった1万2,900円は、上限の範囲内で翌年の住民税額から差し引けます。

 対象となる場合は限られますが、税額控除は所得控除以上に節税効果が大きいと言えます。所得控除や税額控除は適用するほど節税効果が高まります。場合によっては確定申告が必要となるため、自分がどの所得控除や税額控除を利用するのかを考えてみましょう。

 多くの会社員の人は,確定申告をしていないと思いますが,次の所得控除を利用する場合には確定申告が必要です。

・ 医療費控除

・ 寄付金控除(ふるさと納税でワンストップ特例を利用した場合は不要)

・ 雑損控除

 

 また、税額控除については基本的に全ての控除で確定申告が必要です。ただし、住宅ローン控除については、最初の1年だけで翌年以降は確定申告の必要はありません。

 所得控除と税額控除の仕組みを理解し、フルに活用しましょう。

 

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税金の「控除」の意味と仕組み(1)所得控除

「控除」の意味

 税金における「控除」とは、一定金額を差し引くという意味があります。

 控除は個々の事情などを考慮して、税負担を軽する役割を果たしています。控除には「一定金額を差し引く」という意味であり、「現金で返ってくる」わけではありません。

 例えば、毎月給与から天引きされる「健康保険」や「厚生年金」などの社会保険料は、「社会保険料控除」として支払った全額が控除の対象です。ふるさと納税をした場合にも、寄付金のうち2,000円を超える部分に対して控除を受けられます。

このような税金における「控除」ですが、大きく分けて2つの控除

「所得控除」と「税額控除」

に分けられます。

 

【所得控除】

 税対象の所得を減らすことで,14種類あります。以下をご参照下さい。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2015/b/01/1_04.htm

 無条件で控除される基礎控除や,社会保険料の支払い・ふるさと納税をした際に控除されるものなど,さまざまです。

 所得控除は「所得から差し引かれる金額」と言い換えられ、所得に対して一定の条件を満たすことで受けられる控除です。

 

☆ Xさんの場合

年収:400万円(会社からの給与)

支払った社会保険料:60万円

ふるさと納税:4万円実施

 

(1)給与所得控除の計算

Xさんは会社から給与を受け取る会社員であるため、給与所得控除を受けられます。

400万円 × 20% + 44万円 = 124万円

*給与所得控除については下記の国税庁ホームページをご覧下さい。https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/1410.htm

 

(2)給与所得控除後の金額の計算

400万円 – 124万円 = 276万円

(3)所得控除の計算

Xさんの所得は上記の276万円ですが、ここから所得控除を活用できます。

今回の例では、誰でも無条件で控除が受けられる基礎控除が38万円のほか、社会保険料控除とふるさと納税による控除が受けられます。

38万円(基礎控除)+ 60万円(社会保険料控除)+ 3万8,000円(ふるさと納税による寄付金控除)= 101.8万円

(4)所得税額の計算

所得税率の速算表参照

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2013/taxanswer/shotoku/2260.htm 

276万円 – 101.8万円 × 5% = 8万7,100円

「所得控除を受ける」ということは、「現金で返ってくる」という意味ではなく、「課税される所得税額が少なくなる」ということです。所得控除を活用するほど所得が低くなり、結果として納めるべき所得税が少なくなる仕組みです。

ただし、ふるさと納税の場合には「ワンストップ特例」を使った場合と、確定申告をした場合とでは,控除される税金が異なるので注意が必要です。

ワンストップ特例:翌年の住民税が控除

確定申告:所得税と住民税

上記の例では確定申告を行って「寄付金控除」を適用しましたが、確定申告が不要になる「ワンストップ特例」を利用すると翌年の住民税から控除されます。

 

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年金支給は繰り上げか繰り下げか(2) 「繰り下げ」に注意!

増額率が同じですので,

①70歳に繰り下げた場合,65歳受給開始に累計受給額が同じになるのは約15年後

②75歳に 同     ,70歳 同                約17年後

*受給額,税金,社会保障給付の自己負担割合等の関係から「約」としました。生保等から詳細な比較が出ていますので,検索をお願い致します。

 

実際の年齢は

①の場合,85歳前後

②の場合,92歳前後

 

60歳男性の場合,平均寿命が81歳,平均余命が24歳。

 

以上を踏まえると,「お迎え」次第では,繰り下げ年齢により年金を受給することができない場合もあり得ます。

 

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年金支給は繰り上げか繰り下げか(1) 「繰り下げ」はこんなに増える!

高齢夫婦無職世帯の毎月の支出額 約27万円

 同          収入額 約23万7千円(うち年金約21万7千円)

総務省家計調査2019年より

 以上により,その差は貯蓄を取り崩すしかありません。

 

 そこで,年金額を増やすための年金「繰り下げ」の制度を選択するか否かです。

原則65歳から受給開始となりますが,開始時期を遅らせればするほど,年金額が増えることになります。

 1か月遅らせるごとに「0.7%」ずつ増え,1年で「8.4%」増。

年金額が年200万円の場合,1年繰り下げると216万8千円になります。

もし夫婦が2人で繰り下げれば……。

 

 前述の65歳からの受給開始を選択した場合,年金事務所から「繰り下げ」しなくていいのでしょうかという確認の電話があるとか。それほど「繰り下げ」を奨励しています。

 さらに,2022年4月からは,繰り下げの上限年齢を,現行70歳から75歳に引き上げる予定です。

 増額率は同様ですが,70歳までの42%増が,75歳ですと84%増になります。

 

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