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年金金額が少ない人のための「年金生活者支援給付金」について

 以下は,マネーの達人 提供記事(執筆者:社会保険労務士行政書士 小島 章彦)のほぼほぼコピペです。

 あまり知られてはいませんが,年金収入を合わせた所得金額が一定基準額以下の方に対して,受給している年金に上乗せ受給ができる「年金生活者支援給付金」という制度があります。

 この制度は,年金を受給している所得金額が少ない方の生活の支援を図ることを目的として,消費税の10%への引き上げ分を活用しているものです。

 今回は,この年金生活者支援給付金の受給要件や,受給金額について詳しく解説していきます。

  1. 年金生活者支援給付金の種類

年金生活者支援給付金は,

(1) 老齢基礎年金を受給している方に対する「老齢年金生活者支援給付金」

(2) 障害基礎年金を受給している方に対する「障害年金生活者支援給付金」

(3) 遺族基礎年金を受給している方に対する「遺族年金生活者支援給付金」

の3種類に分かれます。

 一つ一つの受給要件や受給金額について見ていきます。

(1) 老齢年金生活者支援給付金

 老齢年金生活者支援給付金の受給要件は,以下になります。

・ 65歳以上の老齢基礎年金の受給者であること

・ 同一世帯の全員が市町村民税非課税であること

・ 前年の公的年金等の収入金額と,その他の所得との合計額が88万1,200円以下であること(前年の公的年金等の収入金額には,障害年金や遺族年金等の非課税収入は含まれません。)

 齢年金生活者支援給付金の受給金額(令和3年10月時点)は,以下になります。

 基準額を月額5,030円として,保険料納付済期間に基づく額と保険料免除期間に基づく額の合計により算出されます。

保険料納付済期間に基づく額(月額)

= 5,030円 × 保険料納付済期間 / 被保険者月数480月

保険料免除期間に基づく額(月額)

= 1万845円 × 保険料免除期間 / 被保険者月数480月

 また,前年の年金収入額とその他の所得額の合計が78万1,200円を超え88万1,200円以下の方は,保険料納付済期間に基づく額(月額)に一定割合を乗じた「補足的老齢年金生活者支援給付金」を受給できます。

 これは,老齢年金生活者支援給付金が受給されることにより,受給所得の逆転が生じないようにするためのものです。

(2) 障害年金生活者支援給付金

 障害年金生活者支援給付金の受給要件は,以下になります。

・ 障害基礎年金の受給者であること

・ 前年の所得が472万1,000円(扶養親族の数に応じて増額される)以下であること(年金生活者支援給付金の判定に用いる所得には,障害年金等の非課税収入は含まれません。)

 障害年金生活者支援給付金の受給金額(令和3年10月時点)は,以下になります。

障害等級が2級の方は,月額5,030円。

障害等級が1級の方は,月額6,288円。

(3) 遺族年金生活者支援給付金

 遺族年金生活者支援給付金の受給要件は,以下になります。

・ 遺族基礎年金の受給者であること

・ 前年の所得が472万1,000円(扶養親族の数に応じて増額される)以下であること(年金生活者支援給付金の判定に用いる所得には,遺族年金等の非課税収入は含まれません。)

 遺族年金生活者支援給付金の受給金額(令和3年10月時点)は,以下になります。

 月額5,030円。( ただし, 遺族基礎年金を2人以上の子が受給している場合には,月額5,030円を子の数で割った金額をそれぞれが受給することになります。)

所得証明などの書類を提出する必要はなし

 年金生活者支援給付金を受給できるかどうかの判定は,市町村などの自治体が提供する所得情報等により行われますので,所得証明などの書類を提出する必要はありません。

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社会人になると天引きされる税金とは?所得税と住民税をわかりやすく解説

 以下は,All About提供記事(文:福一 由紀(ファイナンシャルプランナー)) のほぼほぼコピペです。

 個人が納める税金は,消費,財産,所得に関わるものがあります。消費に関する税金は消費税や酒税,たばこ税などの何かを購入することによってかかってくる税金です。財産に関わるものは固定資産税や相続税など。家や土地を所有していたり,相続したりするとかかる税金です。

 仕事を始めると引かれる税金……所得税や住民税など税金とは,国や地方が公共サービスや社会保障のために使うお金です。みんなで社会を支えるための「会費」のような税金。私たちも色々な形で税金を納めています。

 所得に関する税金は所得税や住民税などです。給与などの収入があるとかかってくる税金ですね。今回は,この所得税と住民税についてご紹介します。

所得税は,給与天引きの源泉徴収と年末調整で精算

 所得税はその年の所得に対してかかる税金です。

 会社員などの給料からは,その都度「源泉徴収」という形で所得税を前払いしています。給与天引きで支払っている税金ですね。もちろん,ボーナスからも源泉徴収所得税を支払っています。

 この所得税,個人の1年間(1月1日から12月31日まで)の所得に対してかかる税金です。なので,年間収入が判明する年末に正しい所得税額を計算し,源泉徴収で前払いした税金と精算することになります。これを年末調整といいます。

 会社員などの給与所得者にとって,所得税は月々の給与から源泉徴収で前払いし,年末調整で精算する(多くの人は払いすぎた税金が戻ってきます)ものといえるでしょう。

給与明細書と源泉徴収票所得税の確認を

 給与明細書や賞与支払明細書に「所得税」と書かれて天引きされているのが,この源泉徴収で支払った所得税です。これらの明細書もきちんと確認しておきたいですね。

 そして12月又は1月に渡される「源泉徴収票」に,最終的に計算され納めた所得税額が書かれています。年末調整できちんと計算したプロセスがこの源泉徴収票で確認できるというわけですね。

住民税は前年の所得にかかってくる

 給料などの所得から納めるべき税金は,所得税の他に住民税があります。所得税は国に納める税金,住民税は地方(都道府県,市町村)に納める税金です。

 この住民税は前年の所得にかかってきます。なので,入社1年目は住民税を払っていないことに(学生時代の収入によっては支払っている人もいます)。入社2年目以降になると,前年の所得に対して,住民税が給料から天引きされることになります。

 社会人になると支払うことになる所得税と住民税。これらの税額の決まり方や税金が安くなる仕組みについても解説します。

個人の節税は所得控除で

 個人の所得にかかる税金は所得税と住民税であることがわかりました。これらの税額は,

「所得金額-所得控除」

から計算されます。この「所得控除」とは,個人の事情を勘案して税金を決めようというものです。

 この所得控除が多いほど税金が安くなります。個人ができる節税は,この所得控除にかかっているといってもいいですね。所得控除には何にいくら払ったというような「物的控除」と,どんな扶養家族がいるというような「人的控除」があります。

所得控除の物的控除:生命保険料控除など

 所得控除の物的控除の中で,多く申請されているのが「生命保険料控除」でしょう。所定の生命保険の保険料を支払うと一定額の控除が認められます。同様に地震保険料控除もありますね。

 また,一定の金額以上(一般には10万円超)の医療費を支払うと「医療費控除」を受けることができます。

所得控除の人的控除:配偶者控除や扶養控除など

 人的控除には,配偶者控除や扶養控除などがあります。年間所得が一定以下の配偶者を扶養していれば控除を受けることができます。

 また,親や高校生以上の子どもなどを扶養していれば扶養控除もあります。

住宅ローン減税も節税効果は高い

 これまで紹介した所得控除は,所得金額から控除されるものです。

 この所得控除以外にも,税額からダイレクトに控除される税額控除がありますよ。住宅ローン減税などと呼ばれる「住宅借入金等特別控除」ですね。こちらは,税金から引かれるので,節税効果は一番高いといえるでしょう。

 社会人になったら,自分が支払っている税金がどのように決まっているのかは知っておきたいですね。所得税や住民税の控除もチェックをしておくと,税金の払いすぎなどもわかるかもしれません。

福一 由紀(ファイナンシャルプランナー

大学卒業後システムエンジニアとして勤務。2人の子どもを出産し退職後FP資格を取得。女性のFP仲間とともに会社を設立し,セミナー,執筆,各種メディアへの企画監修,コンサルティングなどを行っている。

 

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「忘れると4万8000円の損」年末調整で最近提出が増えている"第3の添付書類"

 以下は,PRESIDENT Online 提供記事のほぼほぼコピペです。最後に≪補足≫を付け加えました。

 生命保険料や住宅ローン控除については毎年書類を提出している人が多いのではないでしょうか。経済コラムニストの大江英樹さんは「最近この2つに加えて『小規模企業共済等掛金控除の証明書』を提出するケースが増えてきています。ところが,その証明書の圧着ハガキを開かずに捨ててしまう人が実際にいるのです」といいます――。

そもそもなぜ年末調整が必要なのか

 毎年,11月頃になってくると会社の総務や庶務の係から「年末調整をするために必要な書類なので,記入して○日までに提出して下さい」と言われ,用紙が配られます。みなさんの多くも恐らくその経験があるでしょう。

 実際に年末調整の場合は,還付すなわち税金が戻ってくる場合が多いので,ちょうど年末のボーナスが支給された後,何だかプラスアルファのおまけみたいな感じで税金の戻りがあることに何とも言えない幸せ感をもつ人も多いでしょう。

 そもそも年末調整というのは一体どういうものなのでしょう。勤め人の場合,会社は毎月の給料から所得税を天引きします。これが「源泉徴収」ですね。給与明細を見ると所得税や住民税が差し引かれているのでご存じだと思います。ところが毎月の給与から引かれる所得税はあくまでも概算でしかありません。その理由は向こう1年間の間に給与や賞与の金額が変わることもありますし,結婚や出産,あるいは保険への加入や住宅購入といったことによって当初は予定していなかった「所得控除」が発生するからです。

アメリカにはないシステム

 したがって,まれに追加徴収ということもありますが多くの場合は税金の額が調整され,戻ってくるのです。これは一見とても便利なシステムのように思えます。自分は何もしなくても必要書類だけ提出すれば会社が全部やってくれるわけですから,確かに便利でしょう。

 ただ私個人の意見としては,これはあまり良い仕組みだとは思っていません。例えばアメリカでは,年末調整というシステムはありませんので,給与から源泉徴収された後に自分で申告をして税金の還付手続きを受けなければなりません。面倒なように思えますが,実際にはこれによって税や社会保険の仕組みを理解することができます。これは言わばお金に関するリテラシーを高めることになります。それに政治家の役割というのは究極のところは国民の税と社会保険の負担と給付を考えることですから,それらに高い関心を持てば必然的に政治にも関心を持つようになるのです。

最近提出が増えている第3の添付書類

 とは言え,現実には「年末調整」というシステムがあるわけですから,その仕組みをきちんと理解しておくことは大切です。一般的に年末調整によって税金の額が変化する代表的なものは①扶養家族の情報,②生命保険料等の控除,そして③住宅ローン控除といったものです。

 このうち,②は保険会社から送られてくる「控除証明書」,③は銀行から送られてくる「住宅取得資金の借入金年末残高証明書」を添付して会社に提出します(生命保険のうち,保険料が給与天引きの場合は提出が不要です。また住宅ローン控除は初年度が確定申告で,年末調整は2年目からとなります)。

 このあたりはほとんどの人が毎年実際に提出していると思いますので,あらためてお話する必要は無いと思います。最近はこれら2つに加えて「小規模企業共済等掛金控除の証明書」を提出するケースが増えてきています。あまり聞き慣れない名前ですが,これは一体何かというと,最近利用者が急増しているiDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金に対して所得控除を受けるために必要な書類です。iDeCoの加入者は2021年の8月末時点では210万人を超えています。サラリーマンや公務員での加入者も180万人以上いますので,これを読んでいる読者のみなさんの中にも恐らくiDeCoの加入者がおられることでしょう。

iDeCoの税メリットはいくらになるか

 iDeCoは加入する時に色んな税のメリットがあるという話を聞かされますが,最大の税メリットは掛金の全額が所得控除されるということです。この金額はかなり大きいものです。例えば給与所得者の場合だと,公務員は掛金の上限額は年間で14万4000円,民間企業の場合だと,勤め先の年金制度によって変わりますが,14万4000円~27万6000円までとなります。iDeCoの場合はこの全額が所得控除となるのです。生命保険料控除や個人年金保険料の控除は,住民税と所得税を合わせてそれぞれ最大6万8000円ですから,最も少ない公務員でも各保険料控除の倍以上あります。

 では具体的にどれぐらい税金がお得になるのかと言うと,仮に掛金の上限額が毎月2万円の場合で計算すると年収500万円の場合,年間約4万8000円の税金が戻ってきます。(iDeCoナビ参照。上記金額はあくまでも概算で,実際の金額は異なります)。

圧着ハガキを開けないまま捨てる人も

 具体的にはiDeCoに加入していれば毎年10月末頃に国民年金基金連合会から自宅に「小規模企業共済等掛金控除証明書」が圧着ハガキで届きます(画像参照)。そこに記載されている金額を年末調整の書類に記入し,送られて来た証明書を添えて提出をすれば良いのです。

 ところがこのハガキ,中を見ないままに捨ててしまっているという人も実際にいます。iDeCoに加入していることは認識していてもそれを年末調整の際に出すのを忘れてしまうと,これだけの税金の戻りを受け取ることができなくなってしまいます。

 仮に30歳でiDeCoに加入し,上記の条件で60歳まで積立を続けた場合,積立額の累計は720万円となりますが,税金が戻ってくる分は何と144万円にもなります。iDeCoの税メリットの中で最も大きな所得控除を気付かずに,あるいは忘れてしまっているというのは実にもったいないことです。

忘れた人は翌年の確定申告でも間に合う

 ただし,仮にこれを提出しなかったために年末調整で還付されなくても,そのことに気が付けば翌年の確定申告で申告することで還付は受けられます。また,これを提出しなくても年末調整で自動的に会社が処理してくれる場合もあります。それはiDeCoの掛金を会社が給与から天引きしてくれている場合です。しかしながらiDeCoというのは個人が自分の老後資産形成のためにおこなうものですから,基本,会社はあまり関係ありません。最近では個人の出す掛金に会社が掛金を上乗せするiDeCoプラスという制度も広がりつつあります。この場合であれば給与天引きしてくれますが,まだそういうケースは少ないのが現状です。したがって,やはり自分のところに送られて来た「小規模企業共済等掛金控除証明書」はきちんと取っておき,年末調整で用紙が配られた時には一緒に提出することを忘れないようにすることが重要です。

 最近では年末調整で提出する書類のひとつである「保険料控除申告書」にも「確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金」という項目が作られています。ただし,iDeCoに加入し,最初の引き落としが10月となった場合は,書類が送られてくるのがその少し後になりますので,年末調整で提出するには間に合いません。その場合,翌年に確定申告をすればいいでしょう。

 税や社会保険についてはよくわからないからと放っておくと受け取れるはずのお金がもらえなくなることもありますので,年末調整といえども会社に任せきりにするのではなく,ちゃんと理解をしておいた方がいいですね。

---------- 大江 英樹(おおえ・ひでき) 経済コラムニスト 大手証券会社に定年まで勤務した後,2012年に独立し,オフィス・リベルタスを設立し,代表に。資産運用やライフプランニング,行動経済学などに関する講演・研修・執筆活動などを行っている。近著に『定年前,しなくていい5つのこと』(光文社新書)など。 ----------

≪(提出期限内なら訂正申告ですが)今は提出期限後ですので,「更正の請求」もしくは「修正申告」をします。前者は税額が多かった,還付が少なかった場合,後者は税額が少なかった,還付が多かった場合です。最寄りの税務署にお申し出下さい≫

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年金だけに頼れない…知って得する公的制度 これだけある医療,雇用,住宅など給付・還付金

 以下は,zakzak 提供記事(解説:丸山晴美氏)のほぼほぼコピペです。

 新型コロナウイルスの医療費は公費負担だが,それ以外の医療費が高額になった場合,1カ月の自己負担分が一定額を超えると支給されるのが「高額療養費制度」だ。

 上限額は年齢や年収によって異なり,70歳以下で年収約370万~約770万円の人の場合,一般的に100万円の医療費に対する窓口負担は30万円だが,同制度を利用すれば,自己負担額は約8万7000円になる。加入する公的医療保険に申請する仕組みだ。

 節約アドバイザーでファイナンシャルプランナーの丸山晴美氏は「総合病院で手術する場合などには,あらかじめ病院が制度を教えてくれることもある。ただ複数の医療機関で受診したり,月またぎに支払ったりした場合は注意が必要だ」と指摘する。

 年金受給の際に忘れてはならないのが,加給年金だ。厚生年金保険の被保険者期間が20年以上で,65歳到達時に生計を維持している65歳未満の配偶者か子がいれば加給される。

 該当する配偶者もしくは子の年収が850万円未満または所得が655万5000円未満であることが条件で,年22万4700円加給される。また受給者の年齢に応じて,配偶者の加給年金額に特別加算される。受給するには年金事務所などへの届け出が必要だ。

 定年後に同じ会社で再雇用された会社員も多いが,60歳時点の賃金と比較して賃金が75%未満であれば,「高年齢雇用継続給付」を受給できる。

 被保険者だった期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の人が対象で,原則として事業主を通じて申請するが,受給した場合,年金支給が減額されるなど留意点もある。再就職の場合,「高年齢再就職給付金」という制度があるため,確認しておきたい。

 「住宅関連は補助金制度が豊富だ」と前出の丸山氏。省エネやバリアフリー改修工事で「住宅特定改修特別税額控除」を利用できるほか,老朽化した空き家などを解体する費用に補助金を出す自治体も多い。

 丸山氏は「コロナ禍でまだまだ冷え込んでいる業界も多いため,補助制度は今後も国や自治体が発表する場合がある。制度はあっても,誰も教えてくれないので知らないというケースも多い。自ら小まめにチェックしておきたい」とアドバイスした。

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年金受給の繰り下げが75歳までに拡大 注意点は? 

 以下は,いまどきウォッチング提供(掲載情報の著作権は日本FP協会に帰属)の記事のほぼほぼコピペです。

 現在,60歳から70歳までの間で選択できる老齢年金の受給開始時期の上限が2022年4月以降,75歳まで拡大され,60歳から75歳までの間で選択できるようになります。繰り下げ受給のメリット,注意点とともに,FPとしてリタイアメントプランニングを検討する際の留意点を紹介します。

年金の繰り下げ請求とは 

 年金には 老齢年金,障害年金,遺族年金があります。

 繰り下げ制度があるのは老齢年金で,老齢厚生年金と老齢基礎年金を繰り下げることができます。

 老齢年金は原則として65歳で請求できますが,65歳で請求せずに66歳(※)以降70歳までの間で請求することも可能で,これを繰り下げ請求といいます。

 繰り下げ請求をした時点によって,現在は最大42%年金額が増額されます。

 これが2020年5月29日に成立した年金制度改正法により,2022年4月以降に70歳になる人から,老齢年金の繰り下げ請求の上限が現在の70歳から75歳まで拡大され,75歳で繰り下げ請求をすると年金額は最大84%の増額となります。

 生年月日によっては,65歳未満で特別支給の老齢厚生年金を受け取れる場合もありますが,特別支給の老齢厚生年金に繰り下げはありません。

(※)繰り下げ請求ができるのは,老齢年金の受給権発生から1年後からとなります。

もし65歳時点で老齢年金の受給権が発生していない場合は,権利が発生してから1年後からとなりますので,必ずしも66歳とは限りません。

繰り下げのメリットは?

 老齢年金を増やすには,長く働いて年金保険料を支払う方法がありますが,年金保険料を払わずに増やす方法が,請求の時期を延ばす繰り下げ制度です。

 老齢年金の請求の時期を延ばすことで老齢年金の年金額が増え,増額した年金を一生受け取ることができます。

 リタイア後のメイン収入である老齢年金が増額されるというのは,メリットでしょう。

 老齢厚生年金と老齢基礎年金は同時に繰り下げる必要はありません。

 別々に繰り下げることも,どちらか一方だけを繰り下げることもできます。

 老齢基礎年金を繰り下げる場合,付加年金に加入していた人は,付加年金も同率で増額されます。

 66歳以降に繰り下げ請求をするつもりだった人が急にまとまった資金が必要になった場合は,まとめて受給することも可能です。

 66歳以降に請求するときに,「繰り下げによる増額した年金を請求」するか,「増額なしの年金を65歳にさかのぼって請求」するかのどちらかを選ぶことができます。

繰り下げ請求をするときの注意点

(1)加給年金・振替加算との調整

 老齢厚生年金に加給年金が付く場合には,繰り下げた時点から加給年金が付きますが,加給年金額は増額されません。

 また,繰り下げ待機中に加給年金のみを受け取ることはできません。

 老齢基礎年金に振替加算が付く場合には,繰り下げた時点から振替加算が付きますが,増額されません。

 こちらも繰り下げ待機中は振替加算のみを受け取ることはできません。

(2)他年金との調整

【遺族年金や障害年金を受ける権利がある場合】

 66歳前に遺族年金や障害年金を受ける権利がある場合には,原則的に繰り下げはできません。

 例外として,障害基礎年金を受ける権利がある場合,老齢厚生年金のみ繰り下げ請求が可能です。

 66歳以降の繰り下げ待機中に遺族年金や障害年金を受け取る権利を得た場合は,その年金を受け取る権利を得た時点で老齢年金の増額率が固定され,それ以上は増額されません。

【退職共済年金と老齢厚生年金を受け取る場合】

 退職共済年金と老齢厚生年金は,どちらか一方の繰り下げはできず,同時に繰り下げなければなりません。

 どちらかを先に繰り下げ請求した場合,同日で両方が繰り下げになります。

厚生年金基金企業年金連合会の年金を受け取る場合】

 厚生年金基金または企業年金連合会からの基本年金や代行年金は,老齢厚生年金の繰り下げ支給と連動して増額されます。

 老齢厚生年金の繰り下げをする場合は,厚生年金基金または企業年金連合会からの年金も合わせて繰り下げをする手続きが必要です。

(3)在職老齢年金の対象となる場合

 在職老齢年金の対象となる場合は,調整後の年金額(65歳時点での老齢厚生年金の額から支給停止額を差し引いた額)が増額となり,在職老齢年金の制度により停止されている部分は増額されません。

(4)未支給年金の計算

 繰り下げ請求は,遺族が代わって行うことはできません。

 繰り下げ待機中に亡くなった場合は,65歳時点から死亡時までの年金が未支給年金として遺族に支払われます。

(5)社会保険・税金・介護給付への影響

 繰り下げることによって老齢年金が増えると,負担する社会保険料所得税・住民税の負担も増える可能性があります。

 老齢年金の金額にもよりますが,約10~20%の負担になるため,老齢年金が84%増となっても,実際の手取り額としてはそこまで増えません。

 他に収入があれば,さらに社会保険料所得税・住民税の負担も増えるでしょう。

また,介護保険サービスを利用した際の自己負担割合も,年収が増えると上がります。

繰り下げによる年収増加により,自己負担割合が増えることにつながるかもしれません。

リタイアメントプランニングのアドバイスにおける留意点

 繰り下げによる年金の増額は確かに魅力的ですが,受取時期を延ばすことにより,受け取るまでの期間,本人の生活がきちんと成り立つかどうかを考えなければなりません。

 「いつまで,どのような働き方をするのか」「生活に必要な収入を確保できるか」「老齢年金以外に収入はないか」などを,きちんとヒアリングすることが大切です。

 リタイアメントプランニングの際にキャッシュフロー表を作成するときは,以下の点に注意しましょう。

【収入】

 老齢年金の繰り下げなしや繰り下げありの組み合わせ,退職金や企業型確定拠出年金,個人型確定拠出年金iDeCo)があるなら,その受取方法の組み合わせも考慮して,複数のキャッシュフロー表を作成し,シミュレーションしましょう。

 繰り下げに当たっては,当面の手元資金の余裕について確認が必要です。

 くわえてライフイベントを考慮に入れることも,判断の重要なポイントです。

 男性は1961年4月1日以前生まれ,女性は1966年4月1日以前生まれの人で,65歳未満で受け取れる場合がある特別支給の老齢厚生年金には,繰り下げはないため,65歳からの本来の老齢年金と分けて説明することも大切です。

 相談者の生年月日には十分注意しましょう。

 最新のねんきん定期便で,特別支給の老齢厚生年金を受給できるかどうかを確認するのがよいでしょう。

 加給年金,振替加算についてはねんきん定期便には記載されません。

 相談者や相談者の「家族状況」「生年月日」「年金加入状況」によって加算されるかどうかが決まります。

 70歳までは厚生年金に加入して働くことも可能ですが,在職老齢年金の制度により支給停止される金額は繰り下げしても増額されないことも説明しておきましょう。

 また,正確な年金額については安易な判断はせず,最終的には年金事務所で相談者ご自身が試算してもらうように伝えましょう。

 繰り下げれば老齢年金の金額は増えますが,トータルで受け取る金額は一定年数受け取り続けなければ,65歳から受け取る金額を逆転しません。

 老齢年金は長生きに備える保険だということを伝え,安易に繰り下げをすすめないようにしましょう。

【支出】

 リフォームや車購入,子どもの教育資金,結婚資金の援助などの突発的な支出の可能性がないか,また,介護費用についても考慮に入れる必要があるでしょう。

 老齢年金の繰り下げは,一度請求すると撤回はできません。繰り下げの時期は慎重に選ぶ必要があります。

 ファイナンシャル・プランナーとしては,さまざまな選択肢を示しつつ,相談者に理解してもらえるよう丁寧に説明することが求められます。

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2022年4月からの国民年金の受給額はいくら?

 以下は,あるじゃん(All About マネー)提供記事(文:川手 康義(マネーガイド))のほぼほぼコピペです。

 年金制度にまつわることは,難しい用語が多くて,ますます不安になってしまう……そんな年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。今回は,2022年度の国民年金受給額についてです。

◆Q:2022年度の国民年金受給額はいくら?

 「2022年4月からもらえる国民年金の受給額はいくらでしょうか?」(匿名希望)

◆A:月額6万4816円(年額77万7792円)です

 公的年金は毎年改定が行われ,2022年4月(令和4年度)からは新規裁定者(これから年金をもらう人)も既裁定者(すでに年金をもらっている人)も0.4%の引き下げとなりました。

 具体的には国民年金の場合,月額6万4816円(年額77万7792円)となり,令和3年度に比べ月額259円(年額3108円)の減額となります。
 年金額が少なくなる理由ですが,年金額改定には「物価」や「賃金」の変動率と「マクロ経済スライド」という指標が考慮されます。
 今回の改定に用いられた指標は物価変動率▲0.2%,賃金変動率(注1)▲0.4%,マクロ経済スライドは▲0.3%ですが,各指標を用いる際にはルールがあり,今回は以下の2つのルールが用いられています。
1:賃金変動率がマイナスで物価変動率を下回る場合は,賃金変動率を改定率として用いる
2:賃金・物価による改定率がマイナスの場合,マクロ経済スライドによる調整は行わない
 そのため賃金変動率▲0.4%が令和4年度の改定率となり,4月からの年金額は0.4%引き下げられることになりました。
 なお今回は発動されませんでしたが「マクロ経済スライド」とは,社会情勢(現役人口の減少や平均余命の伸び)に合わせて年金の給付水準を調整する仕組みのことです。
 少子高齢化で年金保険料を負担する現役人口が減る一方で,平均余命の伸びで年金受給人口は増えることから,将来世代の年金給付を維持する目的で設定される仕組みとなっており,平成16年の年金制度改正で導入されました。
 また改定で用いられなかったマクロ経済スライドの調整率は,翌年度以降に持ち越しする決まりになっており消えることはありません(キャリーオーバーといいます)。
注1:正しくは「名目手取り賃金変動率」であり,2年度前から4年度前までの3年度平均の実質賃金変動率に前年の物価変動率と可処分所得割合変化率(0.0%)を乗じたもの。

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副業でもうけが出た場合,いくらから確定申告が必要?

 以下は,ファイナンシャルフィールド編集部提供記事(執筆者:上山由紀子)のほぼほぼコピペです。

 最近,副業という言葉をよく耳にするようになりました。働き方改革の影響もあり,従業員の副業を認める会社も増えてきたことで,会社員の方で副業をされる方も多くなっています。

 ただし,この副業で得た金額によっては確定申告をする必要があります。今回は,会社員の方が副業をした場合の確定申告について解説していきます。

副業でいくら収入を得たら確定申告が必要になる?

 会社員としてお勤めの方の場合は,会社で年末調整の処理をしますので,本来は個人で確定申告をする必要はありません。

 確定申告は,1月1日から12月31日までに得た所得に対して課税される税金を計算し,翌年の2月16日から3月15日までに所得税を申告して納付する(または還付を受ける)ために行うものです。

 ふるさと納税による寄附金控除や医療費控除を受ける場合は確定申告が必要となりますが,会社からの給与所得のみならば,所得税額の精算は年末調整で完結となります。

 しかし,給与所得者の方が副業を行って収入を得た場合,その所得(収入から経費を差し引いた額)が20万円を超えたときには確定申告を行う必要があります。

給与所得者で確定申告をしなくてはならない人は?

 前述したとおり,会社員の方のほとんどが会社の年末調整で所得税額が確定し,納税も完結しますので,確定申告をする必要はありません。

 では,会社員(給与所得者の方)がどんな働き方をすると確定申告が必要となるのか確認していきましょう(※1)。

(1)1カ所から給与の支払いを受けている場合の方で,給与所得および退職所得以外の合計額が20万円を超える方

(2)2カ所以上から給与の支払いを受けている方のうち,給与の全部が源泉徴収の対象となる場合で,年末調整されなかった給与の収入金額と,給与所得および退職所得以外の所得金額の合計が20万円を超える方

 上記(1)は,1カ所から給与を受け取っていて,給与所得にかかる税額の精算が年末調整で完結している人が,副業で得た所得が20万円を超えた場合に該当します。

 上記(2)は,例えば主となる会社で「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している場合は年末調整をすることができます(※2)。 このとき月額10万円の収入だとすると,この収入については年末調整で所得税の精算は完結します。

 しかし,他の会社で月額5万円の収入がある場合,その収入は年末調整ができません。本来は月額15万円の収入があるのに,1つの会社に勤めて同じ月額15万円で年末調整している方と比べると,所得税が低くなって不公平が生じます。

 そのため,年末調整ができなかった給与と副業で得た所得を合計した金額が20万円を超えた場合,確定申告をする必要があるわけです。

 また,副業とは関係ないかもしれませんが,給与所得者で年間の収入が2000万円を超える方も確定申告が必要です。

確定申告をするときに必要なものは?

 副業の収入が20万円を超えたら確定申告を行うことになります。1カ所でも2カ所でも会社から給与の支払いを受けていれば,それぞれの会社の源泉徴収票が必要となります。 また,副業にかかる雑所得の金額も計算しますが,その計算方法は,総収入から必要経費を差し引いた金額になります(※3)。

簡単に確定申告する方法は?

 確定申告の手続きはハードルが高いように思えますが,今ではスマホでも確定申告ができます。 国税庁のホームページでは,副業で得た所得が20万円を超えて確定申告が必要な方を対象に,スマホから申告をするための流れが詳しく説明されているので確認してみてください(※4)。

 まとめ

 2021年はコロナ禍で確定申告の期間が1ヶ月延長されましたが,今年は新型コロナウイルスの影響で期間内に確定申告できない方の場合,申請および承認を受けることで個別に延長が認められています(※5)。

 デジタル化が進み,パソコンやスマホで確定申告ができるようになっているため,感染対策の1つとして自宅からe-Taxなどの利用をお勧めします。また,各地区の税理士会などでも無料相談を行っていますので,副業による初めての確定申告で不明点などがある方は,ぜひ利用してください。

上山由紀子 1級ファイナンシャルプランニング技能士 CFP(R)認定者

出典 (※1)国税庁 No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人 (※2)国税庁 No.2520 2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収 (※3)国税庁 No.1500 雑所得 (※4)国税庁 スマホで確定申告(副業編) (※5)国税庁 新型コロナウイルス感染症の影響により申告期限までの申告等が困難な方へ

 

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100万人以上が手続きせず…「確定拠出年金の放置」で積み立てた年金がもらえないリスク

 以下は,PRESIDENT Online提供(経済コラムニスト 大江 英樹)の記事のほぼほぼコピペです。

 企業型確定拠出年金の加入者が増えている。そんな中,転職や退職の際に手続きをせずに放置し「自動移管」されている人が100万人を突破した。経済コラムニストの大江英樹さんは「退社後6カ月以内に手続きをしないと自動移管され,60歳になってもせっかく積み立てた年金を受け取れない場合もあります」という――。

■積み立てた年金がもらえない窮地

 今回は年金について,せっかく積み立てたにもかかわらず,転職や退職の時に何も手続きをしないことで,そのお金が受け取れないという事態が起こってしまうという恐ろしいお話をしましょう。

 年金とひとくちに言いますが,年金には「公的年金」と「私的年金」の2種類があります。このうち,注意しないといけないのは「私的年金」,中でも「確定拠出年金」と呼ばれるものです。

 確定拠出年金と言えば最近ではiDeCoが注目されていますが,これは正式名称が「個人型確定拠出年金」と言われるものです。一方確定拠出年金にはもう一つ「企業型」があり,実はこちらの方が加入している人の数は4倍ぐらい多いのです。今回お話するのは,この企業型に加入しているにもかかわらず,会社を辞めたり転職したりした時に何も手続きをしないでいると,将来その年金が受け取れないことがあるばかりか損をするというお話です。

■退社後の選択肢は2通り

 企業型の確定拠出年金に加入している人が会社を辞めた場合,どうすれば良いかは次のステージで何をするかによって変わってきますが,ごく簡単に言えば方法は2通りしかありません。ひとつはそれまで積み立てられてきた資産を「iDeCoへ移す」,そしてもう一つは「他の企業型確定拠出年金に移す」です(実際はもう少し例外的なケースもあるのですが,ごくまれな例なので,今回は省略します)。

 このうち,後者の企業型確定拠出年金に移すのは他の会社に転職して,たまたまその会社に企業型があった場合のみです。その他のケース,つまり①自営業やフリーランスになる,②結婚して専業主婦になる,③公務員になる,④無職のまま,⑤企業型確定拠出年金の無い会社へ転職する,のいずれの場合も,方法はiDeCoへ移して運用を続けるか積み立てを続けるかしかありません。

■手続きをしていない人が100万人以上に及ぶ

 ところが,実際にはこのどちらの方法もやっていない人たちがいて,その人数は100万人以上にもなります(iDeCo公式サイト「iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入等の概況」。そしてこの方たちが持っている資産の額の合計はなんと約1500億円もあります。さらに言えば,このお金はひょっとしたら60歳に到達しても受け取ることができないかもしれないのです。  

 企業型確定拠出年金というのは,原則は会社が社員のために掛金を出し,そのお金を社員が自分で管理・運用する仕組みの制度です。せっかく会社が積み立ててくれたお金が将来受け取れないかもしれないということになると,これは一大事です。一体どうしてそんなことになるのでしょう。

■退職後6カ月間手続きがないと「自動移換」される

 このしくみを説明するためには「自動移換」という制度があることをお話しないといけません。先ほどお話ししたように,会社で企業型確定拠出年金に加入していた人が会社を辞めるとそれまでに積み立てられたお金をiDeCoに移すか新しい勤務先に企業型があれば,そちらに移すことになると言いましたが,この手続きは原則として自分で行う必要があります。しかもそれは辞めた後6カ月以内にやらないといけないのです。それをやらないとどうなるかというと,この資産は自動的に売却され,「国民年金基金連合会」というところにお金が移されて現金で預かることになります。これを「自動移換」というのです。

 では,自動移換になってしまうと一体どういうことになるでしょう。これについては以下の4つの問題点が生じます。

1.自動移換後は運用することができない

2.自動移換されている間はずっと手数料だけは引かれる

3.60歳になってもすぐに受け取れない可能性がある。

4.移換手続きに手数料がかかる

■「自動移換」のままでは,ただ資産が減るだけ

 まず最も大きな問題は自動移換されてしまうと,その後は一切運用できないことです。定期預金にすら入りません。言わば現金の状態でそのまま置いておくのと同じですから,利息もつかないまま長い間放っておくことになります。今までのようなデフレの時代であれば,金利がつかなくてもそれほど大きな影響はなかったでしょうが,それにしても運用できないというのは大きなデメリットと言えます。  

 次に自動移換されている間は毎月52円の手数料がずっと引かれることになります。年間で言うと624円ですから,金額自体はたいしたことないように思えますが,前述のようにこの間は一切運用ができないため,金利もつかなければ運用益もありません。したがって,ただ資産が減るだけということになってしまいます。

■60歳になっても受け取れない場合が生じる

 また確定拠出年金の場合は,原則として加入期間が10年以上ないと,60歳から受け取り始めることができません。自動移換されている間は加入期間とはみなされないため,仮に入社して5年間確定拠出年金に加入した後,転職し,そのまま手続きをせずに放ったらかしておくと,60歳になっても引き出すことができなくなってしまいます。

 そして最後は資産を移す場合にかかる手数料です。会社を辞めた後6カ月間放っておくと自動移換となりますが,その際に手数料が4348円引かれます。いったん自動移換されてしまうと,またiDeCoや企業型へ資産を移さないと運用もできないことは前述の通りですが,そうやって戻すにも手数料が1100円かかります。一見,金額はたいしたことがないように思えますが,これらは全てそれまで積み立てられた資産から自動的に徴収されることになります。

 このように自動移換というのは多くの問題があります。ただ,最初からiDeCoによって確定拠出年金を始めた人はこれについてはあまり心配する必要はないと思います。なぜならiDeCoは自分の意思で始めたものですから,その後転職したりすることで立場が変わっても手続きをする必要があるということを自覚している人が多いからです。ところが企業型に加入をしていた人は,会社の制度としてよくわからないままに加入していたケースも多いため,転職や退職をしても手続きをせずに放ったらかしてしまった結果,自動移換になるケースが多いのです。

■「重要なお知らせ」の書類は必ずチェック

 自動移換になると国民年金基金連合会から「確定拠出年金に関する重要なお知らせ(自動移換通知)」という書類が送られてきます。また,そのまま手続きをせず,自動移換のまま放っておくと年に1回は同じく連合会から「確定拠出年金に関する重要なお知らせ(定期通知)」というのが送られて来ますので,その時点で何らかの手続きをしなければならないということに気付くはずです。でも関心のない人であれば,通知が来ても捨ててしまったり,何もせずに放っておいたりすることは十分にあり得ます。

 前述したように放っておくとさまざまな不利益が生じる可能性がありますので,もし不安に思った方は,基礎年金番号を手元に用意して一度コールセンターに電話してみるのが良いでしょう。基礎年金番号は年に一度送られてくる「ねんきん定期便」に記載されています。

--------「自動移換者専用コールセンター」 03-5958-3736 (平日9:00~17:30) -------   

 せっかく会社が積み立ててくれていたにもかかわらず,忘れてしまって受け取れないようにならないよう,注意することが大切です。

大江 英樹(おおえ・ひでき) 経済コラムニスト 大手証券会社に定年まで勤務した後,2012年に独立し,オフィス・リベルタスを設立し,代表に。資産運用やライフプランニング行動経済学などに関する講演・研修・執筆活動などを行っている。近著に『定年前,しなくていい5つのこと』(光文社新書)など。

 

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退去シーズン間近!賃貸物件「原状回復義務」のトラブル予防策【弁護士が解説】

 以下は,幻冬舎GOLD ONLINE提供(森田 雅也 Authense法律事務所 弁護士)の記事のほぼほぼコピペです。

 賃貸物件の「原状回復義務」をご存じでしょうか? 借りたものを元の状態に戻して返却する義務を指しますが,どこまでを入居者に負担させることができるのかといった点で問題となるケースが後を絶ちません。本記事では,不動産法務に詳しいAuthense法律事務所の森田雅也弁護士がケース別に,誰に回復義務があるのか,またトラブルを予防する方法はあるのか,解説していきます。

床のへこみの補修…入居者に負担させることは可能か?

 原状回復義務とは,借りたものを元の状態に戻して返却する義務のことです。

 特に,不動産賃貸についての原状回復義務について,どこまでを入居者に負担させることができるのかといった点で問題となるケースが少なくありません。

 たとえば,通常の生活をする過程で色あせた壁紙や畳の張替えや,通常の家具を置いたことによる床のへこみの補修までを入居者に負担させることができるのかどうかといったことなどです。

 原状回復についてはトラブルが絶えなかったことから,2020年4月1日に施行された改正民法により,原状回復の対象が次のとおり明確化されました。

 「賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。)」 改正後は,この基準とのちほど紹介する国土交通省ガイドラインを参考として,原状回復義務の範囲を検討していくこととなります。

原状回復義務の判断でまず参考にするのは「契約」

 原状回復義務を入居者に負わせることができるかどうかは,どのように判断すれば良いのでしょうか? ここでは,判断の基準を解説します。 まずは契約が優先される 他の法令に反しないのであれば,当事者同士で締結した契約が最優先されます。そのため,まずは入居者との間で交わした契約に記載した原状回復義務についてのルールを確認しましょう。

 契約が法令違反なら無効となる 契約が最優先されるのであれば,契約に次のように記載さえしておけば,すべての損傷を入居者に負担させることができると考えるかもしれません。

 「賃借人は,賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を含む。)がある場合において,賃貸借が終了したときは,その損傷を原状に復する義務を負う。」

 しかし,入居者が一般個人である場合,このような条項が有効とされる可能性は決して高くはないでしょう。なぜなら,このように消費者の利益を一方的に害したり一方的に義務を重くしたりする条項は,消費者契約法の規定により無効とされる可能性が高いためです。

 国土交通省が公表している『「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)のQ&A』によれば,賃借人に不利な特約が有効といえるためには,次の3つの要件をすべて満たす必要があるとされています。

・特約の必要性があり,かつ,暴利的でないなどの客観的,合理的理由が存在すること

・賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて  

 認識していること

・賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること

 入居者が契約書をよく読まないだろうなどと考えて一方的に不利な条項を入れ込んだところで,有効となる可能性は高くありません。それどころか,消費者の無知に付け込むようなことをすればトラブルの原因となり得るほか,SNS上などで情報が広まってしまうリスクさえあるでしょう。

契約に明記が無ければ「ガイドライン」を参照する

 原状回復の範囲について契約書に明記がない場合には,国土交通省が公表しているガイドラインを参考にします。 ガイドラインには原状回復の考え方についてかなり細かく例示されていますので,不動産賃貸をされている方は,一度隅々まで目を通しておくと良いでしょう。 ガイドラインの内容については,次で解説します。

ガイドラインが示す「原状回復義務」の基準

 国土交通省が公表しているガイドラインは,原状回復について事例ごとに細かく掲載されています。ここでは,このガイドラインにもとづく原状回復義務の考え方を解説します。

○原状回復の定義:ガイドラインでは,原状回復義務について次のように定義されています。 賃借人の居住,使用により発生した建物価値の減少のうち,賃借人の故意・過失,善管注意義務違反,その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること

 この定義を前提として,具体的な事例が掲載されています。 原状回復義務負担の具体例 ガイドラインによれば,原状回復義務の負担者はそれぞれ次のとおりです。ここでは代表的な事例を紹介しますので,より具体的に知りたい場合には,ガイドラインを参照することをおすすめします。

 なお,それぞれの負担者はいずれも原則的な考えによるものです。傷がついた際の状況などによっては判断が異なる場合もあるため,迷った際は個別で弁護士へご相談ください。

<床> 床とは,畳やフローリング,カーペットなどを指します。

 これについての原状回復義務の負 者は,次のとおりです。

入居者負担

・引越作業で生じたひっかきキズ

・賃借人の不注意で雨が吹き込んだことによるフローリングの色落ち

・カーペットに飲み物などをこぼしたことによるシミやカビ

・冷蔵庫下のサビを長期間放置したことによるサビ跡

大家負担

・特に破損等はしていないが,次の入居者確保のためにおこなう畳の表替え

・フローリングのワックスがけ

・家具の設置による床やカーペットのへこみ,設置跡

・日照や建物構造の欠陥による雨漏りなどで発生した畳の変色,フローリングの色落ち

<壁,天井> 壁や天井とは,壁紙やクロスなどを指します。

 これについての原状回復義務の負担者は,次のとおりです。

入居者負担

・使用後の手入れが悪いことにより付着した台所の油汚れ

・結露を放置したことにより拡大したカビやシミ

・タバコなどのヤニや臭い

・下地ボードの張替が必要となる程度のくぎ穴やネジ穴

・クーラーからの水漏れを放置したことによる壁の腐食

・落書きによる毀損

大家負担

・テレビ,冷蔵庫などの後部壁面の黒ずみ(いわゆる電気ヤケ)

・壁にポスターや絵画を貼ったことによる壁の変色

・エアコン設置による壁のビス穴や跡 ・日照などの自然現象によるクロスの変色

・下地ボードの張替までは不要な程度のくぎ穴やネジ穴

<建具> 建具とは,襖や柱などを指します。

 これについての原状回復義務の負担者は,次のとおりです。

入居者負担

・飼育ペットによる柱へのキズや臭い

・柱への落書き 大家負担

・破損等はしていないが次の入居者確保のためにおこなう網戸の張替え

地震で破損したガラス

<設備,その他> 鍵など,その他の設備についての原状回復義務の負担者は,次のとおりです。

入居者負担

・清掃や手入れを怠ったことによるガスコンロ置き場や換気扇等の油汚れ,すす

・清掃や手入れを怠ったことによる風呂やトイレ,洗面台の水垢,カビなど

・日常の不適切な手入れもしくは用法違反による設備の毀損

・鍵の紛失や破損による取替え

・戸建賃貸住宅の庭に生い茂った雑草

大家負担

・専門業者による物件全体のハウスクリーニング

・エアコンの内部洗浄

・台所やトイレの消毒

・破損等はしていないが,次の入居者確保のためおこなう浴槽や風呂釜等の取替え

・破損や鍵紛失のない場合の鍵の取替え

・機器の寿命による設備機器の故障や使用不能

入居者が「原状回復費用」を支払わない場合の対処法

 原状回復費用について,敷金が差し入れられていた場合には,原状回復費用を敷金から差し引くことが可能です。そのため,原状回復費用が敷金を上回らなければ,原状回復費用を敷金から差し委引いた金額を入居者に返還することで,原状回復費用を回収することができます。

 しかし,原状回復費用が敷金を上回ってしまった場合には,退去した入居者に対して,その上回った額を請求してゆくことになります。

 しかし,退去した入居者が負担すべき原状回復費用を支払わないケースもあり,トラブルに発展することがあります。このような場合には,次のように対処します。

 内容証明郵便で請求する 通常の郵便や電話などで請求しても支払うべき原状回復費用を支払ってくれない場合には,内容証明郵便で請求をします。内容証明郵便とは,送付した文書の内容と送付日が証明される郵便で,のちに訴訟となった際,訴訟に先立って請求したことの証拠となります。

 心理的にプレッシャーを与えることで,自発的な支払いを促す効果も期待できます。

 ただし,内容証明郵便はその内容も証拠として残るため,記載した内容によってはむしろ自分にとって不利となってしまう可能性も否定できません。そのため,できる限り内容証明郵便を送る段階から弁護士へ相談すると良いでしょう。 弁護士へ相談する 内容証明郵便を送ってもやはり期限までに支払いがない場合には,すみやかに弁護士へ相談することをおすすめします。請求している原状回復の内容を精査したうえで,弁護士から改めて請求をしたり,少額訴訟などの準備をしたりします。

 弁護士から請求をすることで,支払ってくれる場合もあります。

 調停・訴訟を提起する 弁護士から請求をしても支払ってくれない場合には,原状回復費用支払を求めて調停を申し立て,又は,訴訟を提起することになります。調停は,調停委員という第三者を間に入れ,話し合いによる解決を目指す手続きで,合意に至った場合には強制執行をすることも可能です。 調停による解決が難しいと考えた場合には,訴訟を提起することも可能です。いずれの手続きを選択すべきかは,相手方の態度や請求が認められる可能性等を考慮して判断することになります。

原状回復に関するトラブル…予防策はあるのか?

 原状回復についてトラブルになってしまえば,最終的に解決ができたとしても,多大な労力を要することとなります。そのため,可能な限り事前にトラブルの予防策を練っておくと良いでしょう。 具体的な予防策としては,次のものが考えられます。

 ガイドラインに沿った契約内容とする 賃貸借契約書に記載された原状回復義務の範囲が国土交通省ガイドラインと大きく乖離している場合には,入居者が支払いを拒むなどしてトラブルに発展する可能性が高くなります。

 あらかじめガイドラインをよく確認したうえで,ガイドラインに沿った内容で契約をしておくと良いでしょう。

あらかじめ弁護士に契約内容を確認してもらう

 賃貸借契約書にはひな形も存在していますが,ひな形をそのまま利用した場合には,実情にそぐわない内容となってしまう可能性があります。また,大家さん自身が契約内容をよく理解していないケースも少なくありません。そのため,賃貸借契約を結ぶ前に弁護士に契約内容を確認してもらうことをおすすめします。 そのうえで,内容の理解が不安であれば,契約内容について弁護士に内容をかみ砕いて説明してもらっておくと良いでしょう。

 契約内容を入居者によく説明する 原状回復義務に関することを含め,入居者によく契約内容を説明しておくことも重要です。

 入居者からそのようなことは聞いていないなどと主張されてトラブルになることを避けるため,場合によっては契約書とは別でチェックシートなどを設けて,契約内容を理解したことについての署名をもらっておくことも一つの手でしょう。

 ただし,上で記載をしたとおり,いくら入念に説明をしたからといってそれだけで一般消費者に不利となる契約条項が有効となるわけではないことには注意してください。

入居時の状態を写真に撮っておく

 入居者に物件を賃貸する直前に,物件の全体をつぶさに撮影しておくことも,トラブル予防につながります。なぜなら,大家さんとしては明らかに入居者がつけた傷だと考えていても,入居者に入居前からついていた傷だなどと主張されてしまえば,平行線となりかねないためです。

 入居者立ち合いのもとで室内などの撮影をおこない,契約書と一緒に保管をしておくと良いでしょう。 不動産の原状回復に関するトラブルは,後を絶ちません。

 しかし,原状回復トラブルとしては,大家さん側が本来入居者に請求できない通常損耗についてまで入居者に負担させようとしたことによるものも少なくないのが現状です。

 一方的に入居者に不利となる契約を締結させたり,ガイドライン以上の損耗についての原状回復を請求したりすればトラブルに発展する可能性が高いといえます。無用なトラブルを避けるため,ガイドラインに沿った運用をするよう注意しましょう。

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医療費控除で大損しがちな「3つの落とし穴」と,国税庁申告サイトの“罠”

 以下は,ファイナンシャルプランナー〈CFP〉,生活設計塾クルー取締役 深田晶恵氏による記事のほぼほぼコピペです。

 

 昨年,『医療費控除で知らないと大損する「3つの極意」,国税庁作のエクセルに罠?』と題した解説記事を書いて,大きな反響があった。今年はその「国税庁作のエクセルの罠」が直っていて喜んでいたのだが,国税庁の申告サイトにまだ「罠」が残されていた。国税庁に悪気はないはずだが,気付かない人が大損する可能性が高いのは確かだ。医療費控除の「三つの落とし穴」と併せて解説したい。

  •  医療費控除の仕組みを知らずに 申告すると大損するかも  

 確定申告シーズンが始まった。受付は2月16日に開始するが,税金が戻ってくる還付申告は1月4日にすでにスタートしている。今回のテーマである「医療費控除」を申告予定の人は,混雑する前に還付申告を済ませてしまおう。

 昨年2月に当コラムで『医療費控除で知らないと大損する「3つの極意」,国税庁作のエクセルに罠?』と題して書いた記事は,多くの人に読まれた。読者のみなさんは,タイトルの「国税庁作のエクセルに罠?」が気になったのだろう。

 国税庁のサイト内にある医療費控除明細書作成のエクセルの「罠」がどういうものだったのかは後述するが,今年,計算シートは修正され,「罠」は解消されていた。

 今年度版は,使い勝手の良いものになっている!当局のどなたかが記事を読み,直してくれただろうか。こうした変化はとてもうれしいことなので,修正してくれた人に感謝したい。    

 ところが,国税庁の医療費控除の申告ページには,まだ「罠」が残っていた。「罠」という言葉は,言い過ぎかもしれない。実際のところ,国税庁は医療費控除の申告をする国民に「罠」を仕掛けているつもりはなく,悪気もないはず。単に配慮が足りていないだけだと思う。  

 しかしながら,これから解説する重要ルールを知らずに国税庁の申告ページで医療費控除をすると,大損する可能性が高いのは確かだ。医療費控除をする上で絶対知っておきたい三つの重要ルールと,残された「罠」を解説しよう。

  •  多くの人が間違って覚えている 医療費控除の仕組み  まず,医療費控除の仕組みを見てみる。  

 「控除」とは,所得から差し引く金額で,この部分には税金がかからない。つまり「非課税の枠」と考えていい。控除額が多いほど,還付される税金は多くなる。  

 医療費控除を「1年間で支払った医療費の総額が足切り額の10万円を超えると,超えた分が医療費控除」と覚えている人が多いのだが,それは間違い。  

 健康保険の高額療養費の払戻金や民間医療保険などを受け取ったら,医療費の「補てん」として支払った医療費から差し引かないといけないのである。これは,医療費控除の根本的な考え方なので覚えておこう。

◆重要ルール1 「補てんされる金額」は受け取ったお金の全額ではない! 

 このルールは,本当に重要だ。補てんとは,不足を補うこと。「収入」ではない。つまり,補てんされる金額とは,「支払った医療費が上限」となるのだ。保険の給付金の全額ではないことが一つ目の重要ルールである。

 医療費控除の申告の際には,「医療費控除の明細書(内訳書)」を添付する。「医療を受けた人」「病院・薬局などの支払先」ごとに行を変えて記入する仕組みを覚えておこう。  行ごとに「支払った医療費」,補てんする金額があれば,その行に医療費の額を上限に記入する。これを絶対に忘れないようにしよう。医療費控除の明細書を見ておけば間違いが減る。

  •  事例で分かる医療費控除 明細書作成で間違えると損する理由

 ケースで見てみてみよう。

 鈴木一郎さん:歯の矯正治療で50万円を支出。補てんされる給付金等はなし

 妻の貴子さん:乳がんの手術を受け,1週間の入院。医療費支出は10万円(高額療養費適用後),保険会社から入院給付金と手術給付金を合わせて30万円受け取った。  

 まず,一郎さんと貴子さんの明細は2行に分ける。貴子さんの行の「補てんされる金額」を間違えて30万円と記入すると落とし穴に落ちる。  

 なぜ落とし穴なのかというと,貴子さんの補てんされる金額を30万円と書くと,すべての合計額を出すときに,医療費を超える20万円(30万円-10万円)が一郎さんの行の医療費支出50万円から差し引かれてしまうからだ。  

 ケースの例だと,一郎さんの歯科矯正治療の50万円は保険から補てんされる金額はゼロなのに,貴子さんの「補てんされる金額」の上限を超える20万円が一郎さんの50万円の支出から引かれてしまい,控除額が減ってしまう。  

【ルール1を踏まえた正しい明細書作成】

・1行目:一郎さん歯科矯正治療の支出は50万円,補てんされる金額はゼロ

・2行目:貴子さんの乳がんの医療費支出は10万円(高額療養費適用後),医療保険から30万円の給付金でも補てんされる金額は10万円と書く

・控除額の計算:医療費合計額60万円-補てんされる金額10万円-足切り額10万円=一郎さんの医療費控除額は40万円  

【ルール1を知らずに明細書を間違えて作成】

・2行目:補てんされる金額を受け取った給付金全額の30万円と間違えて記入

・控除額の計算:医療費合計額60万円-補てんされる金額30万円-足切り額10万円=一郎さんの医療費控除額は20万円  

 正しい記入例と間違えた記入例の医療費控除額の差は20万円。仮に一郎さんの年収が800万円とすると,節税メリットの損は6万円にもなるのだ。

  •  国税庁「確定申告作成コーナー」に 残された“罠”とは?  

 医療費控除を受ける際,確定申告書に明細書を添付するのが原則だ。明細書は国税庁のサイトで作成できるが,その方法は複数ある。  

(1)明細書のPDFをダウンロードし,プリントしたものに手書きで記入

(2)明細書作成用の「Re1(4)」というファイル名のエクセルをダウンロードしてシートに入力する(計算式が入っている)

(3)医療費集計フォームVer.3.1のエクセルをダウンロードして入力する(計算式は入っていない)

(4)「国税庁確定申告作成コーナー」を使ってネット上で申告書と明細書を作成  

 昨年の記事『医療費控除で知らないと大損する「3つの極意」,国税庁作のエクセルに罠?』の「罠」は,上記(2)のエクセルの落とし穴のことだ。  

 セルに計算式が入っており,支払った医療費を入力していくと下の合計欄に医療費の合計額が自動で計算される。そして,最終的な医療費控除額も自動的に算出されるため,電卓不要で便利だ。  

 しかし,「(5)補てんされる金額」の欄に重要ルール1の「補てんされる金額は支払った医療費が上限」となるような関数(MIN関数)が入っていなかった。補てんされる金額を医療費より多く入力してもエラーがでない。  

 「重要ルール1『補てん金額」は受け取ったお金の全額ではない!」を知った上でエクセルシートに入力しないと,正しい控除は受けられずに大損してしまうシートであった。  

 それを今年,国税庁のどなたかが修正してくれて,補てんされる金額は支払った医療費が上限になるように改善された。  

 良かった!と思いつつ,念のため(4)の「国税庁確定申告作成コーナー」で明細書作成を試みたところ,こちらの落とし穴は改善されていないことを発見。「補てんされる金額」を支払った医療費の額を超える金額で入力してもエラーがでない。

 もちろん,補てんされる金額の入力欄には「支払った医療費のうち生命保険や社会保険などで補てんされる金額」と注意書きはあるが,そもそもの理屈を理解していないと,受け取った給付金の全額を入力してしまうだろう。  

 繰り返すが,国税庁は「罠」を仕掛けるつもりではなかったと思う。しかし,一般市民は「補てんする金額」の「補てん」の意味をじっくり考えているわけではない。間違いが起きないように,「補てんされる金額」は「支払った医療費が上限」となるように設定するべきだろう。  

 なので,私のお勧めの明細書作成は,改善されたエクセルに入力する2の方法だ。こちらにアクセスし,エクセルシートを入手しよう。 >>令和3年分確定申告特集 リンク先から「医療費控除の明細書様式『Excel版』はこちら【Excel/589KB】」をクリック

◆重要ルール2 「がん診断給付金」は「補てん金額」に含めない!  

 さらに落とし穴となるのが,「がん診断給付金」の扱いだ。医療保険の入院給付金や手術給付金は「補てんされる金額」として,支払った医療費から差し引く。ただし,「がん診断給付金」は,差し引かなくてもいいことを知っておこう。  

 がん診断給付金は「がんの確定診断がされたことにより支払われる」ものであり,入院や手術の医療費等の補てんとして給付されるものではない。これは,複数の税務署に確認して得た回答なので,間違っていない。  

 仮に先のケースの貴子さんが,がん保険に入っていて「がん診断給付金」を100万円受け取ったとする。この100万円を間違えて「補てんされる金額」に記入すると,合計欄で一郎さんの歯の矯正治療費の50万円からも差し引かれてしまう。すると医療費控除額はゼロとなり,控除を受けることができない。一郎さんの所得税・住民税に対する節税メリットの約12万円はゼロとなり,大損することになる。

 ちなみに,悪性がん,急性心筋梗塞脳卒中で一定要件を満たしたときに一時金で支払われる「3大疾病保険金」や「特定疾病保険金」も同じ扱いとなるため,医療費から差し引かなくてもいいことになっている。

 3大疾病保険金,特定疾病保険金は,300万~500万円などの契約が多い。間違えて補てんされる金額に含めると医療費控除はまったく受けられなくなるので要注意である。

◆重要ルール3 公的介護保険の自己負担額も医療費控除の対象になる!  

 公的介護保険の要介護認定を受けている家族がいたら,自己負担額も本人または家族の医療費控除の対象となる。この重要ルールを私は今年初めて知った。ファイナンシャルプランナーなのに恥ずかしいです…。  

 医療費控除の明細書の「(3)医療費の区分」欄に,「介護保険サービス」とちゃんと記載があるが,これまで目に入っていなかった。義両親が昨年から介護保険を利用するようになり,介護サービス事業者の領収書に「医療費控除対象額」との記載を見て,「医療費控除の対象になるんだ!」と思った次第である。  

 例えば,同居の両親が大きな病気を持っていないけれど,介護費用は結構な負担というケースはよくある。医療費が10万円を超えるほどかかっていないと,医療費控除はわが家には関係ないと思ってしまうかもしれない。  

 実は,介護費用で医療費控除の申告ができることも,ぜひ知ってもらいたいことの一つだ。

お読み頂き,有り難うございました<(_ _)>

確定申告シーズン到来!医療費控除でコロナ関連費用はどこまで認められる?

 以下は,ダイヤモンド・オンライン 提供(早川幸子氏による)記事のほぼほぼコピペです。

 確定申告シーズン,医療費控除の申請を考えている人も多いだろう。控除対象にはコロナ関連費用も計上が可能だ。では,具体的には何が対象となり何がならないのか。連載『医療費の裏ワザと落とし穴』の第237回では,コロナ禍における医療費控除について,コロナ関連の特例措置も併せて見ていこう。(フリーライター 早川幸子)

コロナ禍での医療費控除はどこまでOK?

特例措置も含めて総チェックしよう

 今年も確定申告シーズンがやってきた。今年は,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大が始まってから,3回目の申告となる。

 2020年以降,COVID-19の感染予防のため,一般家庭でも不織布のマスクやアルコール消毒液などを購入する機会が増えた。また,2021年は,感染の有無を調べるためのPCR検査や抗原検査を行ったり,ワクチン接種などで医療機関に行ったりした人も多いのではないだろうか。

 また,国税庁では,2020年の申告(2019年分)から,コロナ禍に対応するための特例措置を設けてきたが,今年もオミクロン株による感染の急拡大を受けて,申告期限の延長などが発表されている。

 COVID-19に関連する医療費は,どこまで医療費控除の対象となるか。また,申告・納税期限にはどのような特例措置が設けられているのか。確定申告シーズンの今,改めて確認しておこう。

 確定申告は,1月1日から12月31日までの1年間に得たすべての所得(収入から経費などを差し引いたもの)を計算し,国に納税額を申告するための手続きだ。自営業者やフリーランスの人などにとっては必須の手続きだが,会社員や公務員なども無関係ではない。

 会社員や公務員など,勤務先から給与をもらっている勤め人(給与所得者)は,収入や扶養家族などに応じて,毎月の給与やボーナスから,あらかじめ所得税や住民税が源泉徴収されている。1年の途中で,家族が増えたり,家を買ったりして,天引きされた税金と,本来支払うべき納税額に差が出た場合は,勤務先で行われる年末調整で過不足が精算される。

 給与所得者でも,年収2000万円を超えたり,給与以外の所得が年間20万円を超えたりした人は確定申告が義務づけられているが,これらの人を除けば,ほとんどが年末調整で納税手続きは終わる。

 ただし,年末調整では処理しきれない手続きもある。

 納税額は,収入(会社員は給与,自営業は売り上げ)から,必要経費や社会保険料のほか,個人の事情に応じたさまざま「控除」を差し引いた課税所得を基に決められている。

 たとえば,子どもがたくさんいる人は,独身の人よりも食費や教育費がかかる。また,地震津波などの災害に遭った人は,生活再建にお金がかかる。収入が同じでも,その人の置かれている状況によって,税金を負担できる経済力は異なるため,個別の事情に応じた「控除」を設けることで,課税所得を調節して,課税の公平を図っている。

 この控除のひとつが「医療費控除」だ。病気やケガをして入院や手術をしたり,長期療養したりして,医療費が高額になった人の家計に配慮するもので,1年間に使った医療費が一定額を超えた人が利用できる。かかった医療費に応じた控除額を収入から差し引くことで,課税所得が引き下げられ,結果的に税金が安くなるという仕組みだ。

 だが,医療費をたくさん使ったかどうかは個別の事情で,勤務先では把握できない。そこで,医療費控除の対象になる人は,確定申告をして自分で払い過ぎた税金を取り戻す必要が出てくる。

  • 世帯当たり治療にかかった費用が10万円を超えたら医療費控除を申請しよう

  • 治療に関わる費用は交通費も含み控除対象に,予防や美容目的は対象外

  • 個人の都合で民間PCR検査を受け,陽性反応が出た人のPCR検査費用も控除の対象になる

昨年1年間の医療費が世帯で

10万円を超えれば申告可能

 医療費控除を利用できるのは,昨年1年間(1月1日~12月31日まで)に使った医療費が,原則的に10万円を超えた人。総所得金額等が200万円未満の人は,医療費が総所得金額等の5%を超えると申告できる。

 控除額は,昨年1年間に家族みんなでかかった医療費の総額から一律に10万円(総所得金額等が200万円未満の人は,総所得金額等の5%)を差し引いた金額。健康保険の高額療養費,民間の生命保険の入院給付金など,補てんされたお金があった場合は,それも差し引く。この控除額に所得に応じた税率(5~45%)を掛けたものが,申告によって戻ってくる還付金の目安だ。

 このときの医療費は,申告する本人のものだけではなく,同一生計の家族のものも対象だ。同居している家族はもちろんのこと,仕送りしている大学生の子ども,生活の面倒を見ている田舎の両親など,離れて暮らしていても同じ家計とみなされる家族の医療費はまとめて申告できる。

 たとえば,1年間にかかった家族の医療費の合計が60万円で,所得税率10%の人の場合は,5万円が医療費控除で取り戻せるお金の目安になる。

 医療費控除は,控除額が多いほど課税所得が低くなり,結果的に納税額が少なくなる。より多くの還付金を取り戻すためには,控除対象として認められているものを余すことなく,正確に計上していくことが大切になる。

 ただし,医療費控除の対象になるものには,一定のルールがある。

 控除の対象になるのは,「治療や療養のための費用」「医師の指示で使った費用」で,この定義に当てはまれば,一部,医療費ではないものも計上できるようになっている。反対に,たとえ医療費と名の付くものでも,「予防のための費用」「美容目的の費用」は控除の対象にならない。

治療・療養が目的のものと交通費はOK

予防や美容が目的のものはNG,マスクや消毒液も対象外

 たとえば,病気やケガをして病院や診療所を受診した際に支払った健康保険の自己負担分は控除の対象だ。医療費ではないものの,医療機関に行くための電車やバスなど公共交通機関の交通費も,治療に必要な費用として認められている。また,街のドラッグストアなどで購入した市販薬,不妊治療や人工授精の費用,レーシックの手術代,医師の指示で行ったはり・きゅう治療なども,医療費控除の対象として認められている。

 一方,医療機関に支払ったお金でも,予防のためのビタミン剤,美容整形の手術費用,ワクチンの接種費用,入院時に個人の都合で利用した個室の料金などは医療費控除の対象にはならない。また,リラクゼーションのためのマッサージも対象外だ。

 コロナ禍でかかるようになった医療費についても,原則的には「治療目的のものはOK」「予防・美容目的のものはNG」という考えに沿って判断される。

  • マスク・アルコール消毒液

 不織布のマスクやアルコール消毒液は,いずれも感染予防を目的として使うものなので,購入費用は医療費控除の対象にはならない。

  • ワクチンの接種費用

 昨年は,COVID-19の予防,また重症化を防ぐためのワクチン接種が始まった。今のところ,COVID-19は国の「新型インフルエンザ等感染症」に指定されており,ワクチンの接種費用は公費負担だ。ワクチンそのものは無料で受けられるものの,医療機関や大規模接種会場までの交通費はかかる。だが,ワクチンは,あくまでも予防が目的なので,接種会場までの交通費も控除の対象にはならない。

  • PCR検査・抗原検査費用

 国税庁のホームページには,COVID-19の感染を調べるための検査は,「医師等の判断」か「自己の判断」かによって,次のように取り扱いが異なると書かれている。

(1)医師や保健所の指示で検査を受けた場合は,検査にかかった費用のうち,自己負担した分は医療費控除の対象になる。

(2)「海外旅行に行く」「仕事で陰性証明が必要」など,個人的な理由でPCR検査や抗原検査を受けた場合は対象外。ただし,検査の結果,陽性が判明して,治療を行うことになった場合は,その検査費用は医療費控除の対象になる。

 国税庁では,このような解釈を示しているが,そもそも,(1)の医師や保健所の指示で検査を受けるのは,発熱やせきなど,COVID-19の感染が疑われる症状がある人で,ここでの検査費用は健康保険の対象になっている。通常なら1~3割を支払う自己負担分についても公費負担になっており,個人が負担する部分はない。つまり,現実的には,(1)のケースで,医療費控除の対象になるような検査費用は発生しないのだ。

自費PCR検査は医療費控除対象外だが

その後陽性が判明して治療した場合は対象となる

 反対に,(2)の自己都合の検査を受けた人のほうが,医療費控除の対象になる可能性のある人がいる。個人的な理由で受けた民間検査機関のPCR検査は,健康保険は適用されず,全額が自己負担だ。原則的に,自己都合での検査は控除の対象にならないが,その検査でCOVID-19の陽性が判明した場合は,検査機関に支払った費用が控除の対象になるからだ。

 2021年12月以降,都道府県知事の判断で,COVID-19の症状がなくても,「感染の不安がある人」は誰でも,自治体が指定した検査機関で,PCR検査や抗原検査を無料で受けられるようになっている(ただし,検査キット不足で受け付けを中止している自治体もある)。そのため,個人の都合でPCR検査や抗原検査を受けた人も,検査費用がかかっていない人もいる。

 PCR検査や抗原検査の費用は,健康保険や公費負担,国の無料検査などでカバーされる部分も大きい。自費で検査を受けている人は少なく,単純に「医師や保健所の指示」という基準では線引きは難しい。

 こうした実態を見ると,医療費控除に検査費用を計上できるのは,個人の都合で民間検査機関の検査を受けた後,陽性反応が出た人だけということになる。非常にまれではあるが,万一,こうしたケースに当てはまる人がいた場合は,医療費控除に計上できる。

 所得税の確定申告期間は,例年は2月16日~3月15日までだが,オミクロン株による感染の急拡大によって,申告できない人が増える可能性もある。そのため,昨年同様,今年も申告・納税期限は4月15日まで延長されている。申告期限を延長する場合は,申告書の右上の余白に「新型コロナウイルスによる申告・納税期限延長申請」と書いて提出すればよいことになっている。

 また,医療費控除など,すでに納めた税金の還付申告は,この期間にこだわらず,5年以内ならいつでも手続きができる。

 昨年1年間に医療費がたくさんかかったけれど,COVID-19に感染して,今すぐ申告手続きするのが難しいという人は,病気が治ってからでも申告は間に合う。まずは体調を戻すことを優先し,落ち着いた段階で準備を始めよう。

お読み頂き,有り難うございました<(_ _)>

 

「確定申告書」以外で必要なもの・準備しておくと便利なもの

 以下は,All About, Inc. 田中 卓也(マネーガイド)氏による記事のほぼほぼコピペです。

 確定申告では各種申告書のほかにも,源泉徴収票や医療費の明細書といった添付書類,マイナンバーが確認できる書類,スマホやプリンターなど準備しておくと便利なものがあります。

確定申告に必要な添付書類・もの・情報を確認

 確定申告では申告書のほかにも,源泉徴収票や医療費の明細書などの添付書類,申告書一式を郵送する場合の封筒など,必須もしくはあると便利なものがあります。これらを揃えておき,段取りよく確定申告を済ませましょう。

  1. 申告書を入手するためのパソコンとプリンター

 確定申告書を税務署へ直接取りに行く場合は不要ですが,パソコンとプリンターがあれば,自宅等でダウンロードすることが可能です。申告書はモノクロ印刷でも税務署は受け付けてくれるので,プリンターはカラー印刷機能がついていなくても構いません。

 国税庁ホームページから「申告・納税手続>所得税(確定申告書等作成コーナー)>確定申告書等」とクリックしていくと,確定申告書の一覧が表示されます。このコーナーから所得の区分や申告内容に応じて必要な書類を印刷すれば,税務署に申告書を取りに行く必要はありません。

確定申告会場への入場には入場整理券が必要に?

 なお,「税務署に申告書を取りに行く」と書きましたが2021年(令和3年)の確定申告では注意が必要です。というのも,令和3年2月16日(火)から同年4月15日(月)までの確定申告期間中は確定申告会場内への「入場整理券」が必要となるからです(詳細は後述)。

 ただし,入場整理券については,作成済の申告書を提出する場合など,相談を必要としない方については取得していただく必要はないので対応方法としては以下の2通りがおすすめです。

・令和3年2月16日(火)より以前に税務署に申告書を取りに行く

あるいは

・申告書や明細書等の書式をあらかじめ把握して税務署に申告書を取りに行く

です。

 また,そもそも税務署に行かなければ外出の機会も減らすことができるので,ウェブサイト上で確定申告書の作成ができる国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用するのもいいでしょう。申告書を手書きするのに比べて,キレイに印字されますし,指示にしたがって必要事項を入力していけばいいので便利です。

 さらに電子申告(e-Tax,イータックス)なら,税務署に持参もしくは郵送する必要がなく,データとしてクリックひとつで申告できてしまいます。ただし,電子証明書の取得やICカードリーダライターの購入といった事前準備が必要です(詳しくは後述)。

  1. 源泉徴収票など,収入や所得を証明する書類

 申告書が手に入ったら,いよいよ申告書の作成ですが,「確定申告書第一表」には収入と所得を記載しなくてはなりません。

 したがって,収入と所得が記載されている書類が必要になります。給与・年金・不動産・事業・株や土地建物の譲渡など,所得の区分に応じて,収入や所得を証明する書類を用意しましょう。

 特に,年末調整が済んだ給与所得者の源泉徴収票には,収入金額・所得金額・所得控除額・源泉所得税額など,確定申告書作成のための重要な要素が詰まっています。年金受給者の場合には所得金額こそ記載されていませんが,年金の年収が記載されていますので,公的年金等の控除額にあてはめて所得を求めましょう。

  • 不動産所得や事業所得がある人:青色申告決算書など

 青色申告決算書(白色申告者の場合には収支内訳書)が完成していないと確定申告書の作成ができません。したがって,年の会計処理が完了していないと確定申告書の作成ができないことになります。

  • 株の取引を行っている人:年間取引計算書

  • 土地や建物の譲渡があった人:譲渡時の売買契約書,購入時点の契約書,仲介手数料や印紙代の領収書など

  1. 控除証明書

 確定申告書に添付する控除証明書としては,生命保険控除証明書,地震保険控除証明書,小規模企業共済掛金控除証明書などがあります。

社会保険料については,源泉徴収票に記載されてあるもの以外に支払っている保険料があればそれを見て申告書を作成していくことになるので,漏れなく用意しましょう。国民年金および国民年金基金については,支払ったことを証明する書類を確定申告書に添付しなくてはいけません。

  1. 扶養の対象としたい親族の生年月日情報

 配偶者控除や扶養控除が適用できるかどうかの判断基準は,対象者の所得区分・年収と生年月日です。所得区分と年収によって合計所得金額が48万円以下に該当すれば,配偶者控除や扶養控除の所得要件を満たすことになるからです。生年月日が重要なのは,生年月日によって所得控除額が増加する場合があるからです。

 たとえば19歳以上23歳未満の扶養親族がいる場合,特定扶養親族として所得控除額が38万円から63万円に引き上がり,控除対象配偶者の年齢が70歳以上の場合,老人控除対象配偶者として所得控除額が38万円から58万円(同居の場合。同居していなければ48万円)に引き上がります。

 これらは確定申告書の作成上,すべて生年月日で判断されることになります。

  1. 医療費控除の領収書と明細書,医療費のお知らせ

 年末調整で処理できない所得控除で代表的なのが,医療費控除です。診療代・治療代・入院費といったものは,かかった人別,病院別に領収書をとりまとめて集計しておきましょう。市販の治療薬も医療費控除の対象となりますので,レシートなどから日用品などと区別してとりまとめておきます。

 なお,従来,医療費控除を受ける際証明書類とはならないとされていた健康保険組合等から発行される医療費通知(通称:医療費のお知らせ)が,医療費控除を証する書類として認められるようになりました。これがあるとそれに記載がなされているものは医療費に関する領収書をとりまとめる手間が省けるので便利でしょう(画像記載例参照)。

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医療費通知に記載されている金額を転記する箇所(出典:国税庁資料を一部加工)

 ただし,あわせて医療費通知を添付することとなっているので,医療費通知(通称:医療費のお知らせ)の保管をきっちりしておくことも重要です。

  1. 提出時には返信用の封筒や切手も同封

 所得から所得控除を差し引き,課税される所得の金額が算定されれば,総合課税されるもの,分離課税されるものといった所得の区分に応じて税率が課され,年税額が決定します。

 このとき,報酬は給料から差し引かれている源泉所得税があれば,税金の前払いとなるので差し引くことができ,年税額が税金の前払い金より多ければ納付,年税額が税金の前払い金がより少なければ還付となります。

 ここまで記載できた段階ではじめて申告手続きができます。税務署に持参する方法以外で申告手続きは,郵送あるいはe-Taxですが,どちらかを選択するかによって必要なものは変わってきます。

 税務署に郵送で提出する場合は,送信用の封筒と返信用の封筒,それぞれに貼付する切手代等が必要です。返信用の封筒は,源泉徴収票や控除証明書類などを添付書類として提出してしまうので,控えの申告書を戻してもらうためのものです。

  1. e-Taxマイナンバーカード方式のほかID・パスワード方式でも

 平成31年(2019年)1月より,マイナンバーカード方式のほかID・パスワード方式でも申告書の作成が可能になりました。

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© ID&パスワード方式でも確定申告が可能に(出典:国税庁資料より)

 マイナンバーカード方式によるe-Taxによる申告の場合は,マイナンバーカードに代表される電子証明書の取得やICカードリーダライターを購入し,必要な初期設定を行っておく必要があります。

 また,ID・パスワード方式で確定申告する方は事前に,「ID・パスワード方式の届出完了通知」の発行を受けることが必要とされています。「ID・パスワード方式の届出完了通知」の発行は,

・税務署で職員による本人確認を行った上で発行すること

とされているので,運転免許証などの本人確認書類をお持ちの上,税務署に行き,「ID・パスワード方式の届出完了通知」の発行を受けるという方法と,2019年1月から,

マイナンバーカードとICカードリーダライタを使って利用開始届の送信をする

という方法を選ぶことができるようになりましたので,いままで利用環境や今後の確定申告の頻度などにあわせて便利なほうを選ぶといいでしょう。

スマホで確定申告もできる?

 なお,令和2年の申告より,「スマホで確定申告」するパターンが拡充されているので,画像の8.マイナンバーが記載された公的書類と本人確認ができるもの申告パターンに該当する人は「スマホで確定申告」する人が増えるものと考えます。

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 令和2年の申告よりスマホで確定申告できるパターンが拡充(出典:国税庁資料より)

8.マイナンバーが記載された公的書類と本人確認ができるもの

 なお,平成28年の確定申告手続きから,申告書にマイナンバーを記載することとされました(画像記載例参照)。

f:id:ohenstuff:20220220103450p:plain   赤で囲んでいる箇所にマイナンバーを記載することとなります(出典:国税庁資料より)

 なお,申告書にマイナンバーを記載するだけでは事足りず,以下のいずれかの方法により「番号確認」と「本人確認」をすることとなっているので,事前に用意しておいたほうがいいでしょう。

■個人番号カードを持っている人

……個人番号カードの表面と裏面のコピー

■通知カードを持っている人

……通知カードのコピーと運転免許証やパスポートなど写真・氏名・生年月日または住所が確認できるもののコピー

■個人番号カードも通知カードも持ってない人

……個人番号が記載された住民票の写しと運転免許証やパスポートなど写真・氏名・生年月日または住所が確認できるもの,(運転免許証やパスポートがない場合には健康保険の被保険者証と年金手帳など本人確認ができる書類2つ以上)となります。

特に,e-Taxによる申告を行う場合はマイナンバーカードの電子証明書e-Taxに登録する必要がありますので,早めに通知カードから切り替えておいたほうがいいでしょう。また,申告書を持参または郵送提出する人は上記書類をいずれかのパターンで確定申告書に添付することとなります。

7および8はなりすまし申告といった不正を防止するためといった意味合いもあります。

▼確定申告第二表には本人以外のマイナンバーが必要な場合も

 なお,「番号確認」と「本人確認」をすることまでは求められていないものの,確定申告第二表には配偶者控除配偶者特別控除含む)を受ける方のマイナンバー,扶養親族(16歳未満の扶養親族含む)のマイナンバー,事業専従者のマイナンバーの記載が要請されています。

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 赤で囲んでいる部分に控除対象配偶者等のマイナンバーを記載します(出典:国税庁資料より)

 必要に応じて「マイナンバーの記載のある住民票を取得しておく」などが事前準備に含まれる人もいるでしょう。

確定申告で事前に用意しておくべきものまとめ

 確定申告で申告書の他に必要な添付書類,事前に準備しておくべきものをまとめると以下のとおりです。

  1. 申告書を入手するためのパソコンとプリンター

  2. 源泉徴収票など,収入や所得を証明する書類

  3. 控除証明書

  4. 扶養の対象としたい親族の生年月日情報

  5. 医療費の領収書と明細書

  6. 提出時には返信用の封筒や切手も同封

  7. e-Taxマイナンバーカード方式のほかID・パスワード方式でも

  8. マイナンバーが記載された公的書類と本人確認ができるもの

 このほか,電卓,ホチキス,のりといった,書類をとりまとめたり集計したりするための道具があると便利なのは言うまでもありません。

LINE公式アカウントで入場整理券は事前入手

 なお,このように完璧な事前準備できたとしても申告内容によっては税務相談が必要な人がいるでしょう。冒頭に説明したように確定申告期間中,税務相談が必要な人は「入場整理券」が必要となるのですが,このような場合,LINE公式アカウントを通じた「入場整理券」の事前発行をしておくことをおすすめします。

入手方法は以下のとおり

・LINEアプリから国税庁LINE公式アカウントを友だち追加

・「トーク」画面から「相談を申し込む」を選択

・税務署や来場希望日時を選択

・内容を確認して「申込」をタップすれば完了

という流れです。

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LINEアプリからの入場整理券の入手方法イメージ図(出典:国税庁資料より)

 

画面を係員に提示

 このような手続きを行うと画像のような画面が表示されますので,これを係員に提示し,税務相談にのぞむことになります。

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LINEアプリに表示される「申込完了」画面表示イメージ(出典:国税庁資料より)

 もちろん,集計が完了し,質問事項が整理できていれば相談時間も短縮できるので感染症対策にもなるでしょう。

 確定申告手続きを持参または郵送するか,e-Taxで行うかにより事前準備の種類が相違してきますが,確定申告の頻度やパソコン作業等の習熟度,申告パターンなどにあわせて準備にとりかかりましょう。特に,2021年3月期(令和3年3月期)の確定申告は「入場整理券」の運用が開始されるので早め早めの準備が必要です。

 お読み頂き,有り難うございました<(_ _)>

 

確定申告会場へ行く前に確認しておくべき4つのポイント 元税務署員が解説

 以下は,マネーの達人 提供 平井 拓 氏(元税務署職員)の執筆による記事のほぼほぼコピペです。

 令和3年分の所得税の確定申告期間は,令和4年2月16日から3月15日であり,税務署は期間中,確定申告会場を設置して相談対応を行います。

 確定申告会場に行けば,税務署職員に相談しながら確定申告書を作成できるのですが,前もって確認しておかないとトラブルの原因となる情報が4つありますので,元税務署職員である筆者が解説いたします。

確定申告行く前に確認すること

  1. 確定申告会場は税務署とは限らない

 多くの税務署では署内を確定申告会場としていますが,一部の税務署は合同会場や別の場所に会場を設営している場合があります。

 たとえば千葉県にある市川税務署の確定申告相談会場は,「ニッケコルトンプラザ 2階コルトンホール」ですし,東京都にある麹町税務署・神田税務署・日本橋税務署・京橋税務署・江東西税務署・江東東税務署は,東京国税局の1階を確定申告会場としています。

 署外に確定申告会場を設置している税務署では,期間中税務署内で確定申告の相談対応をしておりません。(相続税法人税は,税務署で相談対応しています。)

 また所得税の確定申告期間は2月16日から3月15日ですが,確定申告会場の設営期間は税務署ごとに異なるため,税務署で相談する際はお住いの場所を管轄している税務署および,確定申告会場・開設日をご確認ください。

  1. 閉庁日対応している税務署は一部しかない

税務署は原則として平日しか相談対応をしていませんが,令和4年2月20日(日)と2月27日(日)については,確定申告の日曜日対応している税務署もあります。

しかし全国すべての税務署が日曜日対応をしているわけではありませんので,閉庁日対応の有無は下記のリンク先からご確認ください。

なお日曜日対応する税務署でも,確定申告会場が平日とは別の場所のケースもありますので要注意です。

参考:国税庁「令和3年分確定申告期の確定申告会場のお知らせ(pdf)https://www.nta.go.jp/information/other/data/r03/kakushin_kaijo/index02.htm

 

  1. 確定申告会場への入場には整理券が必要

 令和3年分確定申告期間における申告相談をする際,確定申告会場の入場には「入場整理券」が必要です。

入場整理券は

  ・ 各会場で当日配付

  ・ または,LINEでオンライン事前発行により取得することも可能です。

 LINEで入場整理券を事前に取得する場合,国税庁LINE公式アカウントを友だち追加し,「トーク」画面から「相談を申し込む」を選択してください。

 そして相談する税務署および来場希望日時を選択し,「申込」をタップすると事前申し込みが完了します。

 相談会場へ行かれた際は,事前申し込みしたことを証明する申し込み完了画面を入場時に提示してください。

 なお確定申告会場への入場は,時間単位で区切られており,入場整理券の配付状況によっては当日に相談できない場合もあります。

  1. 申告の必要書類は電話等で事前確認すること

 確定申告期間中の相談は混雑していますし,入場券が必要になる関係上,書類の持参漏れがあれば再度入場券を入手しなければなりません。

 税務署は相談会場以外に,電話でも確定申告対応をしておりますので,はじめて申告手続きされる方は,電話等で必要書類を確認してから相談するようにしましょう。

 なお相談会場と同様,電話相談も大変混雑しますので,電話を掛けるタイミングも重要です。

 8時30分ジャストや,昼休憩が終了する13時前,駆け込み相談が増える一歩前の16時など,空いている可能性の高い時間帯を狙ってお問い合わせください。

お読み頂き,有り難うございました<(_ _)>

確定申告が必要な理由とは? こんな人が得をする!

 以下は,マネーの達人 提供の仲村 希氏による記事のほぼほぼコピペです。

 毎年,2月中旬~3月中旬は確定申告の時期です。

 確定申告と聞くと,「めんどうくさい」「よくわからない」と感じる人が多いのではないでしょうか。

 そもそも,確定申告は何のためにするのでしょう。実は,確定申告が必要な理由は,人によって異なります。しなければいけない人もいれば,することで得をする人もいるのです。

 今回は,確定申告が必要な理由と,どんな人が得をするのかについて詳しく解説します。

確定申告は,なんのためにするのか

 生活をしていると,さまざまな場面で納税をしています。最もわかりやすいのは消費税でしょう。買い物をするたびに,自動的に徴収されています。たばこ税や酒税なども同様で,対象物の購入価格に納税分が含まれています。

 一方で,1年分の利益をまとめて税額を計算し,申告しなければならないものがあります。

 それが,贈与税相続税,そして所得税です。

確定申告では「所得を確定」させて,税額を申告する

 所得税とは,その名の通り「所得したもの」に対してかかる税金です。一般的には,会社員の給与や自営業者の事業所得,あるいは株式投資などの運用利益などが挙げられます。年金収入にも,税金はかかっています。

 働き方は人それぞれです。給与収入のみの人もいれば,副業を持っている人,投資運用をしている人もいるでしょう。あるいは,たまたま臨時収入があった人,相続があった人なども考えられます。

 確定申告では,それらをすべて計算しなければなりません。

所得から控除する作業が大切

 日本にはさまざまな税制優遇制度があります。得た利益すべてに税金をかけるのではなく,あらかじめ定めた金額や利率分を控除して,残額を課税対象にするための制度です。自動的に控除されるものもありますが,中には申告しなければ適用されないものも多くあります。

 控除後の課税所得を「確定」させて「申告」するのが,確定申告の目的です。

会社員は年末調整でおこなえる

 年収のめどが立つ会社員の給与などは,あらかじめ納税分を除いた額が支払われています。

 これを「源泉徴収」と言います。しかし,これには控除分が考慮されていません。そこで,「生命・損害保険料控除」や「扶養控除」などを反映してもらうために,年末調整をおこなうのです。

 つまり,会社員の場合は,確定申告の代理業務を会社がおこなってくれているということです。

働き方によって確定申告が必要な理由は違う

 会社勤めなのか,自営業・フリーランスなのか,家族構成はどうなっているのか,特別な利益や出費はあったのかなど,人それぞれの事情によって,確定申告をする理由が異なります。

 確定申告が義務の人もいれば,義務ではないけれど「すると得をする」人もいるのです。

自営業の人は,税額を申告するため

 自営業の人は,翌年の納税額を確定させるために申告をおこないます。過不足のない納税のため,収益から必要経費等を差し引き,控除を適用させて「今年の課税所得」を算出するのです。納税義務を果たすために,必要です。

フリーランスの人は,支払いすぎた税金を返してもらうため

 フリーランスの人は,働き方によってさまざまです。「給与所得」と「事業所得」,「源泉徴収済・未」などが混在しているという場合もあるでしょう。

 源泉未徴収の事業所得が多い場合は,適切な税額を算出して納税しなければなりません。

 源泉徴収済みの報酬が多い場合は,確定申告をおこなうことで,払いすぎた税金が戻ってくる可能性があります。

会社勤めの人も,申告することで節税できる

 控除制度の中には,年末調整では扱えないものもあります。その場合は,別途確定申告が必要です。

 また,年の途中で退職した人や年末調整に修正がある人,年末調整に提出しそこねた控除資料がある人なども,確定申告することで,払いすぎた税金の還付を受けられます。

申告しなければ適用されない税制優遇制度

 次に紹介するような税制優遇制度は,きちんと申告することで所得税や住民税の課税所得を減らす効果があります。忘れずに申告しましょう。

  1. 住宅ローン減税制度

 毎年の住宅ローン残高の1%を,10年間所得税から控除するという制度です。新築住宅だけでなく,中古住宅の購入も対象です。また,増築・リフォームでも対象となる場合があります。

 年末調整でも控除を受けることができますが,初回(入居した翌年)は,確定申告が必要です。

控除額=住宅ローン残高 × 1%

参照:国土交通省http://sumai-kyufu.jp/outline/ju_loan/index.html 

  1. 医療費控除

 医療費の控除額は,全額が対象ではありません。しかし,配偶者や扶養家族分もまとめて請求できるため,ひとりひとりは少額でも合算すると10万円を超えてしまう場合は,忘れずに申告しましょう。

控除額=(1年間で支払った医療費総額-保険金等で補填される額)-10万円※

※所得合計が200万円未満の場合は,所得合計額の5%

  1. ふるさと納税

 ふるさと納税では,原則として任意の自治体に寄附をおこなった際に,2,000円を超える部分全額が控除されるしくみです。ただし,所得や家族構成によって控除を受けられる上限金額があります。

 また,ふるさと納税「ワンストップ特例制度」を利用している場合は,確定申告は不要です。

控除額(所得税)=(ふるさと納税額-2,000円)× 所得税

控除額(住民税・基本分)=(ふるさと納税額-2,000円)× 10%

控除額(住民税・特例分)=(ふるさと納税額-2,000円)×(100%-10%-所得税率)※所得合計が200万円未満の場合は,所得合計額の5%

参照:ふるなびhttps://furunavi.jp/deduction.aspx#deduction_cat1

  1. 小規模企業共済等掛金控除

 iDeCo(個人型確定拠出年金)を積み立てている人は,申告をおこなうことで積立金全額を所得から控除ができます。

 会社員の場合は,年末調整でもおこなえます。

控除額=iDeCo掛金全額

参照:国税庁https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/r02junbi/index.htm

めんどうな手続きでも,おこなうだけの価値がある

 所得控除とは,「1年の所得額を減らす」ということです。受け取る分が減るのは困りますが,税法上の課税所得額を減らすことで,むしろ「手元に残る分が増える」という結果につながります。

 税金は納めなくてはいけないものですが,多く支払う必要はないでしょう。払い過ぎてしまった税金は,しっかり返してもらいましょう。

お読み頂き,有り難うございました<(_ _)>

 

税法上の「収入」と「所得」は異なる!

*昨年4月に書かれたものですが,内容は今のところ不滅です。

1 はじめに

 「収入」と「所得」。この二つは同じ意味のように思えますが,税法上では全く別ものです。会社員,自営業者,年金生活者を例に,それぞれの収入,必要経費,所得の計算方法を紹介します。

 例えば,「なんらかの給付金が支給される」あるいは「なんらかの助成金が支給される」といった制度があったとします。その際に「一定の収入制限を設けます」という場合と「一定の所得制限を設けます」という場合とでは意味がまったく異なります。

 会社員にとっての「収入」とは,給与や賞与などの年間の合計です。特に給与所得者の場合,年収が,税法の「収入」にあたります。「所得」とは,年収から給与所得控除を差し引いた後の金額(この場合は給与所得)を指します。

 また,この「収入」と「所得」に該当するものは,サラリーマン(会社員),自営業者,年金生活者といった収入形態によっても異なります。以下,個別に解説します。

2 サラリーマン(会社員)の収入と所得

 会社員は税法上,「給与所得者」に分類され,パートやアルバイトも基本的にはこれに該当します。この場合の「収入」と「所得」等は,下記のとおりです。

 【収入】

 給与や賞与などの年間の合計収入です。特に,給与所得者の場合,年収が税法でいうところの収入にあたります。源泉徴収票の「支払金額」欄に書かれている金額です。

【必要経費】

 給与所得者にとっての必要経費は,給与所得控除といいます。給与所得控除の金額は正規雇用や非正規雇用,パートやアルバイトなどの就労形態に関係なく,所得税法上,年収に応じて定められています。

【所得】

 年収から給与所得控除を差し引いた後の金額(この場合は給与所得)を指します。令和2年以降では,画像の図表にあてはめ,給与等の収入金額から,給与所得控除額を差し引いて残った額が,所得(給与所得)となります。

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*参考

 平成29年から平成30年までの給与所得控除額の算定図表を掲載しておきますが,特に以下の3点が変更されています。

・給与所得控除の最低額が65万円から55万円に

・給与所得控除の限度額も220万円から195万円に(子育て世帯等を除く)

・おおむねどの年収層においても10万円減少

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3 自営業者の収入と所得

【収入】

 自営業者の場合,一般的に年商などが収入にあたります。開業医の場合,社会保険料収入や自由診療収入。飲食店経営の場合,ランチやディナーの売上。ライターなら執筆に関する売上などになります。

【必要経費】

 必要経費は収入を得るために必要な経費であり,業種や業態によって,異なります。開業医の場合は,診療所の家賃や駐車場代,看護師や事務員などの給料,医療設備の減価償却など。飲食店の場合,食材や飲料の仕入れ(正しくは売上原価),厨房器具の減価償却,店内の装飾品やコック,ウエイターやウエイトレスへの給料など。ライターなら取材費,取材対象と会うための交通費,記事のウラどりをするための参考図書の購入など。

【所得】

 上記の必要経費を収入から差し引き,残ったものが所得(この場合は事業所得)となります。

4 年金生活者の収入と所得

【収入】

 「公的年金」の額面が収入金額にあたります(民間の保険会社等で年金タイプの保険を除く)。自営業者は国民年金,会社員・公務員は厚生年金と公的年金にはいくつか種類があります。公的年金等の源泉徴収票に記載されている「支払金額」を合計したものが,その年の収入金額です。

【必要経費】

 年金生活者にとって必要経費にあたるものは「公的年金等控除額」といい,年金受給者の年齢(65歳未満か65歳以上か),および公的年金等の収入金額に応じて定めれています。

【所得】

 公的年金等の源泉徴収票に記載されている「支払金額」の合計額から,公的年金等控除額を差し引いたものが,所得です(所得の区分としては「雑所得」)。こちらも給与所得控除と同様,2020年より65歳未満の方でも,65歳以上の方でも10万円引き下げられるます(税制改正)。

*改正について,詳細については検索して下さい。

例えば,従来の税制の公的年金等控除額の最低額は

・65歳未満……70万円   ・65歳以上……120万円   であったものが

・65歳未満……60万円   ・65歳以上……110万円

と10万円引き下げられています。

 また,公的年金等控除については所得が上がれば上がるほど,逓減される改正内容となっています。

5 まとめ

 会社員(給与所得),自営業者(事業所得),年金生活者(雑所得)の収入と所得を紹介しました。なお,所得区分はこの三つを含め,10種類あります。収入がどの所得区分に属するかで,収入を形成するものと必要経費を形成するものが変わることに注意しましょう。

 どのような場合でも,≪所得とは収入から必要経費を差し引いたもの≫です。基本的な計算方法は以下のとおりです。

≪収入-必要経費=所得≫

 大切なことは税額の計算をする場合に,まず所得の区分を間違えないこと,次に収入を構成するものや必要経費を構成するものを正しく理解しましょう。所得を正しく計算することが所得税の出発点です。

*補足

 医師の場合,開業医と大学病院などで働く勤務医がいます。税法上,前者は事業所得,後者は給与所得となるので税金の計算の基礎となる所得の計算がまったく異なります。

 また,「年収が103万円までだと税金がかからない」といわれています。これは,収入から必要経費(給与所得控除)を差し引いたものが所得である考えると,その仕組みが理解できるでしょう。

 この「103万円」とは,「収入-必要経費=所得」の「収入」です(給与所得控除額は最低で55万円と法定)。

算式に数値をあてはめると

103万円(収入)-55万円(必要経費)=48万円(所得)

となります。

 ところで,所得控除は15種類ありますが,そのうち無条件で与えられるのが48万円の基礎控除です。よって,所得が48万円以下であれば,基礎控除48万円が差し引かれた結果,課税所得が0円となるため,税金がかからないというわけです。

 従来,給与所得控除の最低額は65万円だったので上記算式は「103万円(収入)-65万円(必要経費)=38万円(所得)」でしたが,数値が置き換わっています。

 改正後は「103万円(収入)-55万円(必要経費)=48万円(所得)」となり,従来の合計所得金額38万円以下であれば適用対象から外れていたものが,令和2年より合計所得金額48万円以下に引き上げられたので,引き続き控除対象配偶者や控除対象扶養親族になります。

お読み頂き,有り難うございました<(_ _)>