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扶養内で働くときの4つの「年収の壁」 働く時間の判断基準は?

 以下は,マネーポストWEB提供記事のほぼほぼコピペです。

 共働き世帯は年々増加しており,その働き方も多種多様だ。厚生労働省「令和2年版 厚生労働白書」によると,男性雇用者世帯のうち,共働き世帯の割合は66.2%となっている。一方で,パートやアルバイトで働く場合は税金や社会保険の負担が年収によって変わるため,注意が必要となる。この「年収の壁」をどのように考えるべきか。社会保険労務士ファイナンシャルプランナーの川部紀子さんが解説する。

 「○○万円の壁」でおなじみの扶養の範囲。近年,改正により基準となる年収が下がるようになっています。改めて内容を確認して,働き方について夫婦で再検討してみましょう。

「○○万円の壁」で見るべきところ

 会社員の配偶者が,扶養の範囲の収入でパートやアルバイトとして働く場合,税金と社会保険の両面から優遇を受けられる可能性があります。その条件を満たす年収には代表的な4つの「壁」があります。

 その4つの年収が,「約100万円」「103万円」「106万円/130万円」「150万円」です。それぞれの「壁」を超えることで税金や社会保険の負担が増えていきます。

【1】約100万円(※住む市町村により93~100万円):自分に住民税が発生する

【2】103万円:自分に所得税が発生する

【3】106万円/130万円(※パート・アルバイト先の規模等により異なる):自分に社会保険料が発生する

【4】150万円:配偶者の税金(住民税,のちに所得税も)が上がる

 一見,複雑ですが,結論から言うと,【3】だけで判断することをおすすめします。理由は,目先の手取りへの影響が一番大きく,しかし,同時に魅力的な権利を受け取れるからです。これについてはのちほど解説します。

 まず,【1】【2】の壁についてです。仮に,うっかり働きすぎて収入が,【1】約100万円超,【2】103万円超となったところで,発生する所得税と住民税は年間で1万円にも満たないほどです。ご自身の年間の無駄づかいの方が大きい金額かもしれません。

 【4】150万円超に関しては,少し超えると配偶者の住民税が少し上がり,次に配偶者の所得税が少し上がります。自分の収入が上がれば上がるほど,配偶者の税金もジリジリ上がっていく仕組みなので,給料明細の税額までしっかり家計簿に記入している方でなければ,上がったことに気付かない可能性もあります。

 では,【3】106万円/130万円はどうでしょうか。この額に達してしまうと,毎月の給料から健康保険料(40歳以上は介護保険料も)と厚生年金保険料が約15%天引きされます。例えば,月に10万円働いて約1万5000円が引かれるのは大きいですし,年間の金額で考えるとかなりの負担となる額でしょう。

今後は106万円に一本化される可能性も

 長らく,健康保険料と厚生年金保険料がかかる基準としては「130万円の壁」が有名でした。しかし,年々扶養の範囲は縮小傾向にあり,2022年10月からは,扶養されている人が従業員数の多い大手企業に勤務する場合だと106万円から社会保険料が発生するように改正されました(※以前は従業員数501人以上だったものが101人以上に変更)。現在の「106万円の壁」に該当する基準は以下のとおりです。

・週20時間以上(契約した労働時間)

・月収8.8万円(年106万円)以上

・2か月以上の雇用期間が見込まれる

・従業員101人以上の会社 (※これらに該当しない場合は年収130万円で社会保険料が発生)

 今後も対象は広がっていく予定で,いずれは「106万円の壁」に一本化されることも想定しておく必要があるかもしれません。

約15%の社会保険料を払うメリット

 では,「106万円/130万円の壁」についてどのように判断していけばよいでしょうか。まず,自身の体調,介護など家庭の事情によって労働時間数を減らす予定があった場合には調整してみるのも一手です。

 一方,少しでも家計の助けになれば,という理由で働いているのであれば,思い切って社会保険料を払う方向を検討してみてください。さまざまなメリットがあるからです。

 まず,健康保険料を払うメリットから考えていきましょう。年齢を重ねると病気やケガなど体調に不安を感じる場面が増えます。健康保険に加入していると,病気やケガで働くことができない場合,給料の3分の2ほどの金額が最高1年6か月分支給される「傷病手当金」の対象になります。これは,民間の生命保険会社の医療保険よりも安くてパワフルな給付です。仕事をセーブして医療保険に加入するくらいならこちらの魅力を再確認してほしいと思います。

 次に厚生年金保険料を払うことのメリットです。いまの寿命は長く,女性が亡くなる人数がもっとも多いのは93歳です(厚生労働省「令和3年簡易生命表」より)。公的年金の「1階部分」の老齢基礎年金に「2階部分」の老齢厚生年金が上乗せされれば受給金額が増え,その権利は一生涯続きます。長生きに備えるお金を準備する方法として,厚生年金はぴったりです。

 年金の受給資格を満たせば,厚生年金保険料を払っていた「期間」とその時期に得た「給料」や「ボーナス」から納めた額がすべて年金の計算に反映されます。短い期間で少ない時給だったとしても,支払ったことは無駄にはなりません。年金批判を耳にして不安になる人もいると思いますが,実際には長生きして納めた以上に受け取っている人が多いのが現実です。

 また,もしも病気や怪我によって1,2級障害が残った場合の一生涯の権利である「障害年金」も2階建てとなり,3級の障害に対する障害手当金という厚生年金だけの給付の対象にもなります。この意味でも,民間の医療保険よりも安くて手厚いという見方ができます。

 家計に関しては,短期・中期・長期のそれぞれの目線が重要です。約15%もの社会保険料が天引きされるので,短期的なデメリットを感じるかもしれませんが,中期・長期的にはメリットがあるでしょう。

夫婦で考えるべき家の作業との兼ね合い

 ここまでの内容を理解できたとしても,数字や制度の解説では乗り越えられない壁が存在する場合があります。それは,配偶者の理解が得られるかどうかです。

「家のことに影響が出るならそんなに働かないでほしい」「働いてほしいって頼んでないけど」などと,配偶者が家事や育児,介護などへの協力姿勢を見せない場合,当然ながら労働時間を増やせば負担は増えることとなります。

 昭和の高度経済成長期であれば,男性が会社で長い時間働くために,妻は専業主婦という構図は通用しました。残業代が多く,ボーナス,昇給,退職金,年金への期待も持てましたし,今より寿命が短かったという背景もあります。しかし,平成が終わって,令和の今はどうでしょう。家事などを配偶者のみに求める専業主婦モデルは,ごく一部の超高収入の人を除けば,もう通用しなくなっているのではないでしょうか。

 物価は上がり,長い老後が不安な中,平凡な収入であるにもかかわらず,昭和的な考え方で仕事をセーブしようと考えるのは,目先のみならず,中長期的な家計収支の面で圧倒的に不利になります。

 「扶養の範囲」の壁を考える場合は,働き方だけでなく,家計や家事の分担についても,夫婦でしっかり話し合っておく必要があるでしょう。(了)

【プロフィール】

川部紀子(かわべ・のりこ)/FP・社労士事務所 川部商店 代表。1973年北海道占冠村生まれ。生命保険会社で勤務したのち30歳で起業。大学の非常勤講師として講義を担当するほか,個別相談,セミナー・講演講師,各種執筆,テレビ・ラジオへの出演も多数。近著に『得する会社員 損する会社員 手取りを活かすお金の超基本』(中央公論新社)がある。

 

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