民法改正・賃貸借(1)敷金返還・原状回復義務
事例1
賃貸アパートの退去時に敷金の返還を求めたが,クロスの日焼けや床の退色などの修繕を理由に拒否された!
<改正前>
「敷金」の内容についての規定がなく,賃貸借契約終了時に返還をめぐるトラブル多発。
一方,契約終了時に賃借人が負担する「原状回復義務」の規定は,使用貸借の規定を準用。具体的な原状回復の範囲については,判例によっていました。
<改正後>
A「敷金」については,明文化されました。以下のとおりです
1定義
敷金とは,賃料債務等を担保する目的で差し入れられた金銭を言い,名目は問わない。
➡ ×敷金でなく保証金だから返さない
2返還時期
原則として,賃貸借が終了して賃貸物の返還を受けたとき。
➡ ×新しい入居者が入ったら返します
3返還の範囲
滞納家賃や原状回復費用などの未払い債務に充当後の残額,未払い債務がなければ全額返還。
➡ ×日焼けしたクロスの張替え代金を差し引きます
B「原状回復義務」の範囲から,「通常損耗」「経年変化」及び「賃借人の責めに帰することができない事由によるもの」を除く。
◎通常損耗・経年変化の例
1該当(原状回復義務なし)
・家具の設置による床やカーペットのへこみ・設置跡
・畳の変色,フローリングの色落ち
・テレビや冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(電気焼け)
・日照などによるクロスの変色
・壁に張った画鋲やピンの穴(下地ボードの張替え不要のもの)
・地震で破損したガラス
・入居者の入れ替わりによるカギの取替え
2該当しない(原状回復義務あり)
・引っ越し作業で生じたキズ
・たばこのヤニ・臭い
・壁の釘の穴・ネジ穴(下地ボードの張替えが必要な程度のもの)
・ペットによる柱等のキズ・臭い
お読み頂き,有り難うございました<(_ _)>