「遺留分」を現金で払わなければならなくなった!
令和元年(2019年)7月施行
トラブルになりやすい相続において、遺言には強力な効力が認められています。一方で、遺言に不満を持つ相続人は、最低限の取り分である「遺留分」を請求も認められています。
これまでは遺留分を求める遺産が不動産などの場合、実務では,共有名義にすることで解決が図られてきました。
例えば,亡くなった父が
事業の跡を継ぐ長男に自宅兼店舗1億2000万円、次男は預貯金2000万円を相続させる
との遺言を残したケースでは、不満を持つ次男が法定相続割合の半額相当分の遺産を遺留分として請求すると、長男が相続した事業用資産が次男と共有状態となり、事業運営に支障が出ることがありました。
法改正により、これまでの「遺留分滅殺請求」が遺留分を金銭で払う「遺留分侵害額請求」となり、現金に一本化されました。
前述の場合には、
長男が父の全遺産を相続してスムーズに事業継続できる半面、遺留分の1500万円を現金で払う
ことが必要です。こうした事例で現金が準備できないない場合には、新たな問題が生じることが考えられます。そして,請求された遺留分を確定する際、「不動産は金銭換算でいくらになるのか」との疑問も生じます。
預貯金と違い、自宅や事業用資産は必ずしも評価額を明確にできません。しかも一方は遺留分を節約するためなるべく評価額を下げたいし、他方は逆に上げたい。それぞれの思惑が食い違って決着がつかない可能性があります。
このような場合、家庭裁判所に調停を申し立てることになります。
調停の際は、不動産鑑定士の鑑定書や不動産会社の査定書などが有力な判断資料になります。そして,調停でも合意できなければ、地方裁判所に訴訟を起こすことになります。
法改正により,父が事業をしている場合だけでなく、遺言に不満を持つすべてのケースに遺留分の金銭払いは該当します。多額の現金を求められて、問題がいっそうこじれる案件も生じることでしょう。
生前に家族間で話し合いを重ね、全員が納得できる結論を出しておくことが、争いを防ぐ一番の方法です。それは,法改正による新ルールのもとでも変わりありません。
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