悲喜こもごも

読むと得も損もあり!

続・遺言書を書く前に確認すべき二つのこと(知らないと相続手続に支障も)!

行政書士の藤井利江子氏の著作を加除訂正したものです。なお  部は各自お調べ下さい。

 そこで静子さん及び昨年他界した息子さんの出生から現在までの戸籍謄本を取得し,推定相続人の確認を行いました。

 すると,息子の妻には離婚歴があり,前夫との間に子ども(学)が1人いました。この子のことは静子さんも知っていました。しかし,息子は結婚したとき,学さんを養子とする手続きをしていたのです。この事実を静子さんは知らなかったため,大変驚かれました。つまり,静子さんの息子は,戸籍上で美智子さんと学さん,2人の親になっていたのです。

 そうだとすれば,息子さん亡きあと,静子さんの推定相続人は,学さんと美智子さんの2人になります。当初,手続きをスムーズに進めるためにと遺言書作成にとりかかりました。しかし,学さんの存在によって遺言書作成が必須になったのです。

なぜ遺言書作成が必須となるのか?

 この状態でもし,遺言書を作成せずに静子さんが亡くなったとしたら,どうなるでしょうか。遺言書を作成していなかった場合,法定相続分を各自相続するか,あるいは相続人全員で遺産分割協議を行い,静子さんの財産を誰がどれくらい相続するかを話し合うことになります。法定相続分によらない場合,学さん・美智子さんの2人で話し合いをすることになります。

 実際には,静子さんが亡くなった時点で,学さん・美智子さんが存命かどうか最新戸籍を取得し確認します。学さん・美智子さんがご存命の場合は,連絡を取り,遺産分割協議ができる状態なのかを確認します。

 遺産分割協議ができる状態というのは,判断能力があるかどうかということです。たとえば年齢が若くても事故や病気で意思疎通ができず寝たきり状態や認知症等で,自らが行った行為の結果を認識することができない状態であれば,「成年後見人」を選任しなければ遺産分割協議を行うことができません。

 遺産分割協議が難しいとなると,静子さんの財産はその時点では誰も引き継ぐことができなくなります。その点,遺言書があれば,美智子さんは遺産分割協議を行うことなく,すべての財産を引き継ぐことができるのです。

推定相続人を正しく知ることが相続対策の第一歩

 静子さんには調査した推定相続人の報告をし,遺言書の内容を再度確認しました。そうして無事,公正証書遺言を作成することができました。

 今回,静子さんは,学さんの存在が分かっても遺言書の内容を変更するお考えはなかったので,そのまま進めました。しかし,場合によっては推定相続人の遺留分に配慮して遺言書を作成しなければ,争いを招く結果になる可能性があります。

 このように,ご自身とは直接関係のないところで家族関係が変わり,結果としてご自身の推定相続人が思っていたものと相違することもあります。

 「財産をどう分けるか」ということも大事ですが,その前にご自身の戸籍を取得して推定相続人を正しく知ること,これが相続対策を行う初めの一歩になることでしょう。

「続々」に続きます。

 

お読み頂き,有り難うございました<(_ _)>