悲喜こもごも

読むと得も損もあり!

相続準備,遺言書づくりの注意点!

 以下は,マネーポスト WEB提供記事(女性セブン2022年8月18・25日号)のほぼほぼコピペです。最後に≪補足≫を付け加えました。

 お盆に帰省して,老親と将来のことについて話し合った人もいるかもしれない。そうした中で,将来的に避けて通れない話題が相続だ。話しにくい話題ではあろうが,スムーズな相続のためにはどんな事前準備が必要なのか。相続の事前準備の中でももっとも重要なのは,やはり「遺言書」の作成だ。ただ,実際に遺言書をつくっている人はまだまだ少ない。

 ベリーベスト法律事務所の弁護士・田渕朋子さんが説明する。

日本公証人連合会によると,公正証書遺言の作成件数は令和3年度で10万6028件。近年は8万~11万件で推移していて,単純比較はできませんが,年間死者数が140万人を超える現状では,少ない印象です」(以下同)

 遺言書には,すべて自分で手書きする「自筆証書遺言」と,公証役場で作成する「公正証書遺言」の2種類がある。

「自筆証書遺言は,手書きする分,記入漏れなどのリスクがあります。もし不備があれば,遺産分割協議をやらなければならない場合もあります。一方の公正証書遺言は公証人が作成するため,不備がある可能性は低い。その分,作成には,仮に1億円を1人に相続させるとすると,5万4000円の手数料のほか,枚数に応じた費用がかかります」

 もちろん,遺言書の内容に細かい希望がある場合などは,弁護士などの専門家に依頼することも可能。

 財産額によっては40万~50万円近くかかる場合もあるが,良心的な弁護士事務所なら,20万円以下で受任している場合もある。

 作成にかかる時間は,公正証書遺言であっても,だいたい1か月前後。預貯金の残高など,財産の内容がわかっていれば,時間も手間もさほどかからない。

「遺言書に必要な『財産目録』は,相続財産にどんなものが,どれくらいあるかを示すもの。これは,2019年に施行された改正相続法により,通帳のコピーなども有効になり,より手軽につくれるようになっています。例えば,不動産の財産目録なら,登記簿謄本のコピーが有効です」

家族への思いを「付言事項」に

 必要な形式さえ守っていれば,難しく考える必要はない。家族仲がとてもいい家庭などは,相続のためというより,卒業証書のような感覚で遺言書をつくる人もいるという。

 その際,家族への思いを「付言事項」として書き残す。公正証書遺言だと,付言事項が長くなればなるほど費用もかかるが,自筆証書遺言なら,費用を気にせず好きなだけ書くことができる。ただし,付言事項にも注意は必要だ。

「家族への感謝の気持ちなど,喜ばれるものならいいのですが,生前の恨みつらみなど,残された人がカチンとくるような内容はご法度です。付言事項に書くべきなのは,“介護をしてくれた長女に多く渡したい”など,遺言書本文に書いた遺産分割の『分割理由』です。合理的な判断のもとに残された遺言だとわかれば,紛争を防ぐことにつながります。

 また“生まれつき障害がある次男が生活に困らないようマンションを買ってやった”といった場合,相続時に『特別受益(相続財産の前渡し)』と見なされて持ち戻しの対象になり,後から相続税を課せられることがあります。これを防ぐためには,付言事項に持ち戻し免除の意思を明確に示しておくことです」

 遺言書に遺留分を無視した配分があると,いくら付言事項で“きょうだい仲よく”などと書いても,余計に揉めるだけ。付言事項はあくまでも「メッセージ」と考え,不備のない遺言書をつくることを優先すべきだ。

 そして,医師による「認知症ではない」という診断書があれば万全。だが,その証明は難しいため,自筆証書遺言は相続時に否認されることも少なくない。一方,公正証書遺言であれば,公証人による意思確認のもと作成されるため,その心配はない。

「遺言書の内容に不満を持つ相続人が“この遺言書は,認知症を発症してから書いたに違いない”と主張し,無効にするための裁判を起こすこともあります。中には“これは本人が書いたものではない”と言い出し,筆跡鑑定までしようとする人もいるほどです」(曽根さん)

遺言書は相続人全員にオープンに

 長い間,一緒に暮らしてきた家族あてとはいえ,誰が見ても納得がいくようにつくらなければ,思わぬ争いを招く。また,後から思いもよらない財産が出てくるケースも。

「財産目録に見落としがあることは少なくありません。あらかじめ遺言書に“その余の財産は○○に残す”などと書いておくと,手続きがよりスムーズに進むでしょう。ただし,仏壇やお墓などの祭祀財産は遺産分割の対象にはならず,相続財産とは別の理念で継承されるもの。“その余の財産”に含まれるとは限らないので,できれば,祭祀財産を承継する『祭祀主宰者』が誰かも記載してほしい」(田渕さん)

 そして,遺言書ができたら,なるべく相続人全員にオープンにしておくのが理想的だ。余計な相続税を払わないようにするのはもちろん,何より争いを避けるには,多少のお金がかかっても,やはり公正証書遺言の方が確実だ。

認知症を発症してからでも,判断能力が失われるほどでなければ,遺言書をつくったり,つくり直すことはできます。しかし“誰かが自分にとって有利な遺言書をつくらせた”などと疑われる可能性もゼロではありません。作成時にビデオ撮影をしておく手もありますが,それでも決定的な資料にはなりません。いちばん大切なのは,事前に親族で話し合って,誰もが納得することです」(的場さん)

 結局のところ,家族仲をよくしておくこと以上の相続対策はない。その上で,最愛の家族に何を残せるか,何を受け継ぎたいか考えれば,最善の方法はおのずとわかるはず。

≪遺言書があると,ない場合よりも相続手続きが簡便(必要書類が少なく)なるということもあります。なお,付言事項には遺言としての法的効力は基本的にありません≫

お読み頂き,有り難うございました<(_ _)>