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70歳定年法と年金制度改正(1)あなたの老後は?

  近年,会社員は定年後の再雇用も含め65歳までは給与収入、65歳以降は年金収入を柱として考えてきました。しかしながら、2019年の総務省労働力調査」によると、60代後半の就業率は10年間で36%から48%に増加しており、長く働く人が増えています。そこで,昨年、年金制度改正法と改正高年齢者雇用安定法が成立し、長く働ける社会の仕組みを整得ようとしています。

 

 そこで,法改正の内容と高齢期の働き方について考えみましょう。

A 年金制度改正法の概要

1 在職中に受給できる年金の増加(2022年4月)

2 年金受給開始時期の選択肢の拡大(2022年4月)

3 確定拠出年金の加入可能要件の見直し(2022年5月)

4 被用者保険の適用拡大(2022年10月、2024年10月)

以上,年金制度改正法による主な改正点は4点です。

 次に、それぞれの改正内容を紹介します。

 1 在職中に受給できる年金の増加(2022年4月)

(1)65歳以上の老齢厚生年金

 厚生年金の適用事業所で働いていれば,原則70歳まで厚生年金保険加入が義務となります。そして,加入した期間と給与の額が受け取る年金額に反映されます。しかしながら、すでに老齢厚生年金を受給している場合、65歳以降に働いた分が年金額に反映されるのは退職時または70歳到達時になります。

 したがって,65歳で厚生年金の受給を開始して70歳まで厚生年金の保険料を支払いながら働いていても、70歳になるまでの5年間年金の額は変わりません。

 これでは働く意欲が削がれるということで、年金額が毎年見直されるよう改正されました。納めた保険料が在職中に年金額に反映されるため、年金を受給しながら働く人は、毎年少しずつ受け取る年金額が増えていきます。

(2)60代前半の特別支給の老齢厚生年金

 60歳から64歳時に支給される特別支給の老齢厚生年金を対象とした在職老齢年金制度については、支給停止とならない範囲が拡大されます。現在は賃金と年金の月額相当が合計28万円以上なら支給停止の対象となりますが、これが47万円に引き上げられます。

 ただし、そもそも特別支給の老齢厚生年金を受け取ることができるのは支給要件(加入期間1年以上など)を満たす1961(昭和36)年4月1日以前生まれの男性と1966(昭和41)年4月1日以前生まれの女性に限られます。

 したがって,その恩恵を受けられる方は限定されます。

2 年金受給開始時期の選択肢の拡大(2022年4月)

(1)繰下げが75歳まで可能に

 老齢基礎年金・老齢厚生年金は、65歳より前に(繰上げ)受給を開始すると年金額は減額され、65歳より後に(繰下げ)受給を開始すると増額されます。そして,改正により繰下げ受給は65歳から75歳までの最長10年間可能になります。

繰下げによる増額率は1月あたり0.7%のまま変わりませんので、10年繰り下げると

0.7%×120ヵ月=84%

の増額となり、増額された年金額を生涯にわたって受け取れることになります。

 (2)繰上げ受給率が0.5%減額➡0.4%減額に

 年金を繰上げ受給すると1月あたり0.5%減額されましたが、改正により減額率が0.4%となります。したがって,最長5年間(60ヵ月)繰上げた場合の減額率は30%から24%に緩和されます。

<次回に続きます>

 

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