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住宅ローンで設定される抵当権とは?(1)質権との相違,性質

はじめに

 抵当権は,返済が順調であれば問題はありませんが,返済が滞った場合に「抵当権の実行」されて競売に至ることがあります。そして,それは所有者だけでなく,借家人にも影響を及ぼすことがあります。

 

1 抵当権と質権との相違

 抵当権は,貸金等の担保として,貸し手である債権者が借り手側の不動産に設定する権利です。

 抵当権を設定すると,借り手である債務者(抵当権設定者)の返済が滞ったときに,抵当権を実行して競売を申し立て,貸し手(抵当権者)は競売代金から優先的に貸付債権(被担保債権)の回収ができます。

 質権は,抵当権と同様,貸付債権を担保する権利です。しかしながら,抵当権とはその仕組みや利便性が異なります。

 質権の仕組みは,担保となった物を貸し手の元に留置させ,弁済したときに借り手に戻すことになります。例えば,住宅ローンで質権を設定すると,住宅は金融機関側に据え置かれ(留置),その管理の必要やコストが発生します。一方,借り手側は,住宅ローンを完済するまで住むことができない事態が生じます。完済までに20年かかったすれば,築20年の住宅しか所有できないことになってしまいます。

 ところが,抵当権は担保になった不動産を貸し手側に留置しないので,借り手側はその不動産を利用できます。

 このような両者の相違から,住宅ローンなどの不動産担保において,抵当権が貸し手側・借り手側双方にとって利便性が高く,多くの場面で用いられています。

 

2 抵当権の性質

  抵当権には,主に四つの性質があります。

(1)物上代位性

    抵当権が設定された不動産が滅失するなど,担保としての目的が果たせない場  

   合に,価値がある別の物に代えて権利行使できます。このような性質を「物上代

   位性」と言います。

    例えば,抵当権の目的物が建物の場合,建物が焼失すると担保の目的が果たせ

   なくなります。しかしながら,建物に火災保険の対象であれば,その保険金から

   弁済を受けることができます。ただし,物上代位で債権回収するには,抵当権設

   定者へ火災保険金等が支払われる前に,それを差し押さえる必要があります。

(2)不可分性

    目的物の全体に抵当権の効力が及びます。例えば,抵当権の目的物が土地の場

   合に,借入金の半分を弁済したからといって,抵当権の範囲が土地の半分にはな

   りません。

(3)付従性

    抵当権は被担保債権の存在と一体になる(存在に付き従う)性質があります。

    例えば,借入金が完済されていたり,被担保債権が事項により消滅したりする

   と,抵当権の登記を抹消しなくとも抵当権は消滅します。

(4)随伴性

    抵当権は被担保債権の移動に伴う性質を持っています。例えば,抵当権者その 

   貸付債権を第三者へ譲渡した場合,抵当権も第三者(譲受人)へ移転し,抵当権 

   設定者が貸付債権を弁済しない場合,譲受人である第三者から競売の申立てがで

   きます。

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