悲喜こもごも

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民法改正・賃貸借(4)所有権移転に伴う賃貸人の地位移転

事例4 

賃借人が住んでいる中古マンションを購入したが,このまま賃貸借契約を引き継ぎ,家賃を請求できるか?

 

<改正前>

 賃貸借契約中の物件が第三者に譲渡された後の賃貸借関係の規定はありませんでしたが,判例で,所有権移転登記をすれば,新たな所有者は賃借人に対して賃貸人であることを主張できる(賃料請求可能)。

 

<改正後>

 判例を明文化し,以下のとおり。

1 賃借人の賃借権が登記されている,あるいは,賃借人が借地借家法上の対抗要件(建物の引渡しを受けている)を備えているのであれば,原則として賃貸人の地位は,物件が譲渡されたとき譲渡人から譲受人に移転。

2 新賃貸人がその地位を賃借人に対抗する(賃料請求する)には,所有権移転登記が必要。

 

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民法改正・賃貸借(3)賃借物の一部が使用不可になった場合の賃料減額

事例3

母屋と離れを月20万円で借りていたが,離れが地震で倒壊。賃料は減額してもらえるか?

 

<改正前>

 賃借人の過失によらず物件の一部が滅失した場合,賃借人は滅失部部の割合に応じて賃料の減額請求ができました。しかしながら,「できる」規定のため,賃借人の請求がなければ賃貸人に賃料値下げの義務は生じない。

 

<改正後>

 賃借人の責めによらず,分権の一部が滅失その他の事由により使用・収益ができなくなった場合には,その割合に応じて賃料が減額されます。つまり,適用範囲が「一部滅失」だけでなく「一部使用・収益不能」にまで拡大されました。そして,「できる」規定から「当然に減額する」規定に。なお,賃借人に帰責事由がある場合には減額されません。

 この条文は任意規定のため,契約当事者間の合意の方が優先されることになります。したがって,賃貸借契約の特約として細則・付記がされることになるでしょう。もし基準等がない場合には,トラブルに発展する可能性も。

 

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民法改正・賃貸借(2)賃借人による修繕

事例2

台風の直撃を受け,借りている家の屋根から雨漏りが。大家に何度も屋根の修繕を依頼したが,なかなか応じてもらえない。自分で業者を手配し,後で修繕費を請求したい。

 

<改正前>

 明確な規定がなかったものの,判例で認められていた。また,賃貸物について「賃貸人の負担に属する必要費を支出したとき」には償還請求できるとの規定あり。

 

<改正後>

 以下に該当すれば,賃借人による修繕が可能なことが明文化。

1 賃借人が賃貸人に修繕が必要であることを通知しても,あるいは賃貸人がそれを知っても,相当な期間内に必要な修繕がなされない。

2 急迫の事情がある。

 

*必要費:物件の維持に必要な費用。雨漏りや破損した窓の修繕費など。賃借人は直ちに請求できる。

*有益費:物件の価値増加のための費用。傷んだ床の張替え代,下水道の引込工事費など。賃貸借契約終了時に,価値が残っている範囲で賃借人は請求できる。

 

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民法改正・賃貸借(1)敷金返還・原状回復義務

事例1

賃貸アパートの退去時に敷金の返還を求めたが,クロスの日焼けや床の退色などの修繕を理由に拒否された!

<改正前>

「敷金」の内容についての規定がなく,賃貸借契約終了時に返還をめぐるトラブル多発。

一方,契約終了時に賃借人が負担する「原状回復義務」の規定は,使用貸借の規定を準用。具体的な原状回復の範囲については,判例によっていました。

<改正後>

A「敷金」については,明文化されました。以下のとおりです

1定義

  敷金とは,賃料債務等を担保する目的で差し入れられた金銭を言い,名目は問わない。

  ➡ ×敷金でなく保証金だから返さない

2返還時期

  原則として,賃貸借が終了して賃貸物の返還を受けたとき。

  ➡ ×新しい入居者が入ったら返します

3返還の範囲

  滞納家賃や原状回復費用などの未払い債務に充当後の残額,未払い債務がなければ全額返還。

  ➡ ×日焼けしたクロスの張替え代金を差し引きます

 

B「原状回復義務」の範囲から,「通常損耗」「経年変化」及び「賃借人の責めに帰することができない事由によるもの」を除く。

◎通常損耗・経年変化の例

1該当(原状回復義務なし)

・家具の設置による床やカーペットのへこみ・設置跡

・畳の変色,フローリングの色落ち

・テレビや冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(電気焼け)

・日照などによるクロスの変色

・壁に張った画鋲やピンの穴(下地ボードの張替え不要のもの)

地震で破損したガラス

・入居者の入れ替わりによるカギの取替え

2該当しない(原状回復義務あり)

・引っ越し作業で生じたキズ

・たばこのヤニ・臭い

・壁の釘の穴・ネジ穴(下地ボードの張替えが必要な程度のもの)

・ペットによる柱等のキズ・臭い

 

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民法改正・消滅時効(2)更新・完成猶予

Q2時効の完成を阻止する制度は,改正でどのように規定されているか?

<改正前>

中断は,①中断事由発生により時効完成が妨げられ,その後,②中断事由終了によりリセットされて新たに時効が進行する。

停止は,時効期間中の停止のみで,リセット効果なし。

<改正後>

完成猶予は,裁判上の請求(訴え提起)や差押え等の強制執行の着手により時効の完成を妨げる。

更新は,裁判の判決確定や強制執行の手続終了により時効がリセットされる。

 

従来の「中断」「停止」が,「更新」「完成猶予」の制度に再編!

 

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民法改正・消滅時効(1)消滅時効期間の短縮化

Q1契約上の債権の消滅時効期間は,何年?

A<改正前>

 原則,権利を行使できるとき(客観的起算点)から10年。他に,短期消滅時効(1~3年),商事消滅時効(5年)。また,債務不履行責任(契約責任)と不法行為責任の消滅時効は,それぞれ期間や起算点が異なっていました。

 <改正後>

 改正前と同様,客観的起算点から10年としつつ,権利を行使することができることを知ったとき(主観的起算点)から5年を追加しました。いずれか早い方で時効は完成します。短期消滅時効と商事消滅時効は廃止。

実質的に5年に短縮!

<注意>

★保険法 ← 改正されず

  保険給付の請求権,保険料の返還請求権,保険料積立金の払い戻し請求権の時効期間は3年。保険料の請求権は1年。

労働基準法 ← 経過措置あり

  同法上の賃金請求権(除:退職手当)の時効期間は2年から5年に延長されるも,当分は3年。

 

◎新設:被害者の権利保護を強化する特則(生命・身体の侵害に基づく

    損害賠償請求)

    客観的起算点は20年,主観的起算点は5年。

 

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住民税の課税の仕組み(2)均等割と所得割

均等割について

 非課税となる方を除き,前述のとおり所得金額の多少とは無関係に課税されます。

均等割(年額)は以下の通りです。2014年度から2023年度までは,東日本大震災の復興税として,各税に500円加算されています。

            均等割             所得割

       2013年度まで 2014~2023年度まで

都道府県民税  1,000円   1.500円       4%

市町村民税   3,000円   3,500円       6%

 合 計    4.000円   5,000円      10%

 

地域によって異なる均等割額

 居住地域によっては,各税が異なる場合があります。

 例えば,神奈川県では,県民税に「水源環境保全税」(300円)を上乗せ(2021年度まで),横浜市が市民税に「横浜みどり税」(900円)を上乗せしています。

 お住いの住民税をお調べ下さい。

 

所得割について

 税率の合計は,原則として前年の所得金額の10%です。

 計算の流れは,以下の通りです

①前年の収入金額

②合計所得金額(①につき必要経費等の控除・損益通算)

③総所得金額等(②につき損失の繰越控除,他の所得等)

④課税所得金額(③につき各種控除)*所得税の控除額より小さいものあり)

⑤算出税額(④につき10%の税額計算)

⑥納付税額(⑤につき税額に係る各種控除)

 

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住民税の課税の仕組み(1)

 所得税などは国税ですが,住民税は地方税で,都道府県及び市区町村によって税額が異なります。

 そこで,

(1)住民税とはどのような税金で,

(2)均等割や所得割とは何か,そして,どうして住む場所によって金額が異なるかを解説します。また,

(3)改正についても触れます。

 

住民税って?

 都道府県民税と市町村民税を併せたものです。また,個人にかかる個人住民税と,法人にかかる法人住民税があります。

 そして,個人住民税には,前年の所得金額に応じて課税される所得割と,所得金額にかかわらず定額で課税される均等割があります。その年の1月1日に現住所があれば,課税されます。また,住所がなくても,事務所や家屋敷を持っている方(借りている場合を含み,貸している場合を除く)には,所得割の課税はありませんが,均等割が課税されます。

 

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副業にまつわるお金の話(2)

「副業」には確定申告が必要

 副業の所得が年間20万円超の場合,確定申告が必要です。たとえ,20万町でなくても,確定申告により所得税の還付や住民税の減額の可能性があります。国税庁のサイトで計算することもできます。

 また,起業したことになるため,売上げや経費の管理を自身で行うことが必要です。さらに,売上げが年間100万円超になったら,一定の要件を充たし,税務署の承認を受けた場合,税制上の「青色申告」という優遇の対象になります。

メリットが大きいので,事業継続のためには必要です。

 

追記:副業中,これから副業を考えている方のために!

 問合せ先は年金事務所,税務署です。解らない点などを伝えると丁寧に説明してもらえます。なぜなら,年金加入者・納税者になるのですから。

 

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副業にまつわるお金の話(1)

副業のスタイル

A雇用されて給与を受け取る「副業」

個人事業主フリーランスで,報酬を受け取る「副業」

 

 上記の区別を正確に知る必要があります。

 Aには,通常は労働条件通知書や雇用契約書があります。

 Bには,業務委託契約などを締結しています。

 なにもない場合,振り込まれた通帳の明細に「キュウヨ」とあれば,Aと判断できます。

 

副業のスタイルによって異なる社会保険手続

A  雇用されて給与を受け取る「副業」

 社会保険(健康保険,厚生年金)完備の事業所で,労働時間などの一定の要件を充たせば,副業先でも社会保険に入ることになります。

 ただし,その手続は「自分で」しなければなりません。

 例えば,副業先が法人で,週20時間以上働き,賃金が月8.8万円超なら,法律上の手続義務が生じると考えましょう。本業の本社を管轄している年金事務所に問い合わせをしましょう。もしも,両事業所で加入する場合には,書類の提出が必要となり,各給与に応じた社会保険料を負担することになります。

 雇用保険は,通常本業のみとなります。また,労災保険は保険料負担はなく,どちらでも対象となります。

 

B  個人事業主フリーランスで,報酬を受け取る「副業」

 現行法上では,本業の事業所の社会保険(健康保険,厚生年金)のみで,手続や支払いはありません。

 雇用保険労災保険も本業のみになり,いずれも副業は対象外です。副業においては,従業員ではなく自営業者として扱われますので,補償は一切ありません。

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親が要介護になる前に(4)元気なうちにやるべきことは?

 親子でお金の話ができない理由を考えます。

 同居している場合を除き,コミュニケーションが不足しています。また,預貯金の残高が少ないと思われたくない親のプライドや,子どもから当てにされたくない,お金を無心されるのではないかという恐れなどがあるようです。

 まずは,何らかの方法でコミュニケーションを図りましょう。電話でも,オンラインでも利用がしやすくなりました。

その上で,お金の話をして下さい。

 

親が元気なうちになるべきこと

1コミュニケーションを図る

2親の気持ち(言葉の背景にある気持ち)を知る

3親の暮らしぶり(住環境や近所付き合いなど)を知る

4親の健康状態をする

5親の「かかりつけ医」や知り合いに連絡先を知らせる

6親の今後(要介護になった場合など)の希望を聞き出す

7親の経済状況を把握する

8親の上記の情報を兄弟姉妹で共有し,話し合う

エンディングノートに必要なことを記述する

10認知症になっても,預貯金が使えるように対策を講じる

 

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親が要介護になる前に(3)認知症になった場合にできなくなることは?

 前回は,老人ホームの入居費用が高額になることをご紹介しました。

ところが,認知症になったら,親のお金は自由に使えません。

 

 その理由は,病気や事故等で認知機能が失われると,本人は契約行為等の法律行為ができなくなってしまいます。したがって,子ともが介護費用に充てるために,親の預貯金を引き出したり,生命保険を解約したり,自宅不動産を売却することができません。

 それらをまとめると

1預貯金からの出金

2契約書などの署名押印(無効の扱い)

3不動産の売却などの処分

4賃貸物件の新たな契約

5相続手続への参加(相続放棄・承認を含む遺産分割協議への参加)

6財産などを贈与すること,贈与を受けること

7遺言作成(無効の扱い)

 

次回は,親が元気なうちにやっておくことをご紹介します。

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親が要介護になる前に(2)有料老人ホームの介護費用

例)要介護3の方が有料老人ホームに入居した場合

  • 月額利用料18万円

内訳 家賃6万円,管理費65,000円,食費55,000円

その他の雑費2万円程度

内訳 おむつ代,日常の生活品,医療費,レクリエーション費,理美容代など

  • 入居時費用18万円(敷金)

 

次回は,親が認知症になった場合に,子ができなくなることをご紹介します。

 

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親が要介護になる前に(1)介護の期間と利用限度額

 親は元気そうに見えても,いつ体調を崩して介護が必要になるか,わかりません。

すぐに介護が必要にならないにしても,病気や怪我で入院し,その後に介護が必要となることは,大いに起こりえます。

 

 もし介護が必要になった場合,介護に要する費用は?そして,誰がその費用を負担するのでしょうか?

 

 ある調査(H30年度)によりますと,

介護の平均的期間は54.5か月=4年7か月

その費用は,月額7.8万円

*介護に要した一時的な費用の合計額の平均69万円

 

 ご存知のように,65歳以上の高齢者なら介護保険サービスを受けることができます。

 利用限度額は,以下のとおりです。

介護予防 要支援1  5万0030円

        2 10万4730円

居宅介護 要介護1 16万6920円

        2 19万6160円

        3 26万9310円

        4 30万8060円

        5 36万0650円

 自己負担分は,上記の金額の1割です。

 しかしながら,超えた分は全額自己負担となります。

 

次回は,実例をご紹介する予定です。

 

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